- 著者
-
浦田 秀次郎
Shujiro URATA
- 出版者
- 公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)
- 雑誌
- ERINA REPORT (PLUS) = ERINA REPORT (PLUS) (ISSN:24329304)
- 巻号頁・発行日
- no.161, pp.3-8, 2021-08-20
経済成長には貿易の拡大が重要な役割を果たすが、新型コロナ禍や米中貿易紛争などによって保護主義の動きが増大しており、貿易拡大が難しくなっている。世界貿易機関(WTO)は貿易ルールの形成や自由化を通じて、貿易拡大を促す役割を担っているが、加盟国の意見の違いなどから、期待された役割を果たしていない。そのような中で、貿易の拡大に共通の関心を有する国々の間で自由貿易協定(FTA)を締結する動きが活発化している。アジア太平洋地域では、環太平洋パートナーシップ(TPP)と地域包括的経済連携(RCEP)の二つのメガFTA 構想が出現し、協定締結に向けて交渉が行われてきた。日本、豪州、シンガポール、ベトナムなどの国々は両協定交渉に参加したが、米国はTPP のみ、中国はRCEP のみに参加したことで、TPPとRCEPは米中対立といった視点から議論されてきた。FTA は基本的には貿易政策であるが国際関係、国際政治の要素も含んでいる。本稿では、TPPとRCEP に焦点を当て、アジア太平洋における地域経済統合への動きの背後にある日米中の思惑や戦略について議論し、米国がTPP から離脱した状況の中で地域経済統合実現に向けての日本の役割について考察する。