- 著者
-
浦野 栄一郎
- 出版者
- 日本鳥学会
- 雑誌
- 日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.3, pp.109-118, 1990-03-25 (Released:2007-09-28)
- 参考文献数
- 22
一夫多妻の雄と番ったオオヨシキリAcrocephalus arundinaceusの雌同士が,なわばり内でどのように共存しているかについて検討した.調査は1980-87年に石川県河北潟干拓地で行った.一夫多妻第二雌の定着は第一雌の産卵~抱卵期に多くみられ,両雌の産卵開始は平均14.1日ずれていた.新しい雌が定着する時期は,雄が活発にさえずっている時期に対応していた.また第二雌は,なわばり内の第一雌の巣からより離れた所に営巣する傾向があり,平均巣間距離は21.0mだった.定着したばかりの雌と先住雌との間では,争いが頻繁にみられた.雌の定着の時間的ずれは,(i)番い形成•造巣期に雄のさえずりが不活発になることと,(ii)雌同士の反発とによって生じるものと考えられる.雌同士の反発は,第二雌の営巣場所選択にも影響しているであろう.