著者
高林 晴夫 桑原 惣隆 浮田 俊彦 山藤 薫 伊川 和美
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.149-152, 1997-03-01
被引用文献数
4

近年, 新しい胎児DNA診断法として母体血中の胎児有核細胞によるDNA分析が強い関心を集めている. 標的細胞として胎児白血球, 胎児有核赤血球, 絨毛細胞が考えられるが, なかでも実際には胎児有核赤血球を標的とした研究が多く進められている. 我々は以前に母体血中の胎児有核赤血球の回収法として, 新しくPercoll不連続密度勾配比重遠心法を開発し報告を行ってきたが, 今回, 本法を用いて母体血中への有核赤血球の出現状況を正常妊婦91例, 正常褥婦19例, コントロール20例について検討を行った. その結果, 健康成人男女20例からは有核赤血球の出現はみられず, 母体血中からは妊娠5週よりその出現がみられ始め, 8週以降は全例にみられた. 母体血(7ml)中に出現する有核赤血球数についても検討を行った. 妊娠初期では5週より出現がみられ, 20週に向けて漸増し, 中期では平均20個台で推移し, 分娩前に急増し, 分娩後は速やかに減少する傾向を示した. 以上より, 母体血中の胎児有核細胞による胎児DNA診断を進める場合, 胎児有核赤血球を標的細胞とすることの有用性が示された.