著者
浮田 実
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.341-352, 1977-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
32

肝性昏睡は一部の症例を除いては一般的に予後不良と言えるが,肝疾患に対する治療法の進歩により,その臨床経過ならびに予後も変化してきていることが考えられる.そこで,本稿においては最近17年間に岡山大学医学部付属病院第一内科に入院した肝性昏睡102例を対象として,臨床経過,死因,予後の時代的変遷を検討した.その結果,肝硬変では,最近5年間に肝性昏睡からの覚醒率が高くなってきており,治療法の進歩をうかがわせたが,一方では,肝癌合併例の急激な増加,肝腎症候群を呈する例の増加が顕著であり,これらの例の予後は不良であった.肝性昏睡を繰り返す,いわゆる慢性型肝性昏睡の肝硬変では,初回肝性昏睡から平均2~3年で死亡した.fulminant hepatitisでは,肝性昏睡から1週間以内に覚醒した例は完全な回復を示した.亜急性肝炎で肝性昏睡に陥った例はすべて2週間以内に死亡した.