著者
海老名 泉紀
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.340-348, 2020 (Released:2021-01-22)
参考文献数
18

目的:子どもが急変を起こす以前に看護師がどのような経験をしているのか,一連の過程を把握すること.方法:子どもの急変経験がある看護師9名に非構造化面接調査を行い,グラウンデッド・セオリーを用いて分析した.結果:看護師は何が起こるかわからない《不確かな状況》において,危機を回避するために《子どもの声を届ける》という過程がある一方,回避するための思うような対応が得られず《引っかかりを残す》という,異なる帰結に至る過程が把握された.これら帰結を導くプロセスは,《アンテナを張る》《何かが起こる予感》《医師との共有化のハードル》《声にならない声を届ける使命感》《周囲を巻き込む》で構成され,子どもの状態を医師と共有できるかが道筋を分ける分岐点となった.結論:子どもの急変においてはこの共有化のハードルをいかに下げ,一人の看護師の感覚を医療チーム全体の問題意識にしていくことの重要性が示唆された.