著者
藤田 景子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.198-207, 2014-08-20 (Released:2014-09-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

目的:周産期および育児期を通じたDomestic Violence: DV被害女性のDV被害に対する認識の回復過程を明らかにすることを目的とした.方法:質的記述的研究デザインを用い,21名のDV被害女性に半構成面接を行った.結果:DV被害女性の周産期および育児期を通じたDV被害からの回復過程として,段階1〈家族維持のためにDV被害の認識を意識下におしこめている〉,段階2〈夫への期待が失望に変わりDV被害を認識していく〉,段階3〈アンビバレントな感情を抱えたままDVの関係から抜け出す〉,段階4〈DVの関係から心身ともに出る〉の4つのカテゴリーが抽出され,コアカテゴリーとして《自分らしさを取り戻していくDV被害からの回復過程》が明らかになった.周産期には多くのDV被害女性はDV被害を認識しておらず,気持ちが揺れ動く不安定な状態も存在していた.結論:周産期および育児期は家族を維持させなければならないという思いが強く,夫の態度が変わることを期待しやすいためにDV被害を認識できない構造があると考えられる.看護者がDV被害女性の被害からの回復過程を理解し,その人らしくあることを支援するケアはDV被害からの回復を促すことにつながることが示唆された.
著者
江本 リナ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.39-45, 2000-08-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
35
被引用文献数
13 3
著者
高橋 有里 菊池 和子 三浦 奈都子 石田 陽子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.36-45, 2014-03-20 (Released:2014-03-28)
参考文献数
33
被引用文献数
7 5

目的:BMIを指標とした実践に即した筋注時の針の刺入深度を明らかにすることである. 方法:18歳以上の553名(男性259名,女性294名)を対象とし,身長,体重,三角筋部と中殿筋部の皮下組織厚,および三角筋厚を測定した.BMIと皮下組織厚の関連を明らかにし,また筋厚を参考にし,筋注に必要な実際的な針刺入深度を明らかにした. 結果:三角筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.04×BMI−0.25,女性0.04×BMI−0.17と表せた.ただし,BMI<18.5の対象者の場合三角筋厚が薄いため,骨膜を損傷する恐れがあった.したがって,針の刺入深度は,18.5≦BMI<30.0で1.5 cm,BMI≧30.0で2.0 cmとするのが適切と考えられた.中殿筋部においては,皮下組織厚(cm)は男性0.05×BMI−0.38,女性0.05×BMI−0.03と表せた.ただし,皮下組織厚の厚さからBMI≧30.0では皮下投与になる可能性があった.したがって,針の刺入深度は,BMI<18.5では1.5 cm,18.5≦BMI<30.0では2.0 cmとするのが適切と考えられた. 結論:BMIを指標とした実際的な筋注における針の刺入深度は,三角筋部では18.5≦BMI<30.0は1.5 cm,BMI≧30.0は2.0 cm,中殿筋部ではBMI<18.5は1.5 cm,18.5≦BMI<30.0は2.0 cmが適切と考えられた.
著者
西上 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.257-266, 2016-01-19 (Released:2016-01-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3

目的:本研究の目的は,作成した自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の信頼性と妥当性を検証することである.方法:尺度項目は文献検討等から作成し,専門家による修正,プレテストを経て,「計画」49項目,「組織化」11項目,「装備」14項目,「トレーニング」22項目,「予行演習」9項目,「評価と改善」9項目の114項目で作成された.対象は全国4,298施設の病院看護部であった.調査は郵送法で実施し,分析には相関係数,信頼性係数等を用いた.調査期間は2013年5~6月であった.結果:723施設から回答があり,有効回答は555施設(12.9%)であった.信頼性についてα係数は尺度全体得点で0.987, 下位尺度ごとのα係数も0.843~0.971であった.基準関連妥当性,構成概念妥当性も確保された.結論:項目数が多いという課題は残るが,この尺度は自然災害に対する病院看護部の備えを測定するための有用性を認めた.
著者
沖中 由美
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.19-29, 2006-12-20
被引用文献数
3

本研究は,身体障害をもつ高齢者が老いと身体障害をもつことについていだく自己意識を明らかにし,介護老人保健施設入所中の高齢者9名に面接を行い,比較分析した結果を記述した.<br>身体障害をもつ高齢者の自己意識は7カテゴリーに分類された.高齢者は,【身体障害や老いることについての過去の意識】をもちながら,身体障害をもつという逃れられない現実を【「蜘蛛の巣」に絡まる身体】と意識し,施設で生活する自分を【籠の鳥】と意識していた.また,【支えてくれる家族と帰れる家】があることによって不安定な自己を支え,一方では帰る家がないことで生きる意味を見出せないでいた.さらに,高齢者は過去の自分との比較で【「輝いていた」ときと「輝かない」今】と意識し,他の高齢者との比較で【先行きは不安でも今の自分は幸せなほう】と意識していた.高齢者はこうした自己意識をいだきながら自らの【生と死】について考え,生きる意味を探していた.<br>この結果から,身体障害をもつ高齢者が自己実現を目指し前向きに老いを生きるためには,ケア提供者が高齢者にできる自分を意識させ,施設内の高齢者同士の関係性を築けるようにし,高齢者が自分の居場所を確保できるように援助する必要性が示唆された.
著者
中原 未智 日髙 未希恵 酒井 一夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.211-219, 2021 (Released:2021-09-23)
参考文献数
15

目的:看護師の診療看護師(以下,NP)への認知度と期待,NPを志望する看護師の潜在状況を明らかにすることとする.方法:東京都目黒区内の病院,診療所,介護施設,訪問看護ステーションに勤務する看護師を対象に,NPの認知度,期待,関心に関する横断的調査をWebアンケートにて実施した.結果:110施設へ計818部の研究資料を配布し72件の回答を得た.多重ロジスティック回帰分析では,所属施設にNPが在籍する看護師は,在籍しない看護師よりNPの認知度(オッズ比61.62,p < 0.01)及び期待(オッズ比9.219,p < 0.05)が高かった.一方で,NPを志望する看護師は13.9%に留まった.結論:より多くの施設にNPを在籍させることは,NPの認知度と期待を高める.
著者
田中 浩二 吉野 暁和 長谷川 雅美 長山 豊 大江 真人
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.184-193, 2015
被引用文献数
1

<b>目的:</b>精神科看護師が日常的な看護実践の中で意識的あるいは無意識的に経験している患者看護師関係における共感体験の特徴を明らかにすることである.<br><b>方法:</b>精神科看護経験を5年以上有する看護師30名を対象として非構造的面接を実施した.面接では関係性が深化し印象に残っている事例とのかかわりについて語ってもらい,Bennerの解釈的現象学に依拠して解釈した.<br><b>結果:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験として,4つのテーマが解釈された.「患者との関係性への関心と患者理解に向かう欲動」「患者と看護師の人間性や生活史が影響しあう」というテーマには,看護師が患者にコミットメントし,患者の負の感情や苦悩を緩和したいという看護師の願望が現れていた.また「ケアの効果の現れで体験する確かに通じ合えた感覚」「時空を超えた一生の絆」というテーマには,患者と看護師が通じ合え,両者の間で喜び,感動,驚きなどの感情体験や安心感,満足感が共有されたことが現れていた.<br><b>結論:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験は,ケアの一場面を取り出して説明できる現象を超えたものであり,日常のケアの連なりの中や両者の生きる時間が影響しあう中で体験されることが考えられた.
著者
古屋 肇子 谷 冬彦
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_55-2_61, 2008-06-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
17 3

本研究は,病棟看護師(N=242)のバーンアウト生起から離職願望に至るプロセスモデルの検討を,Amos 5.0により共分散構造分析で行った.調査は,自尊感情尺度,絶望感尺度,バーンアウト尺度(Maslach Burnout Inventory: MBI),離職願望尺度の4尺度からなる質問紙を用いた.5つの構成概念(自尊感情,絶望感,情緒的消耗感,脱人格化,離職願望)から構成されるモデルの適合度指標はいずれも十分に高かった.看護師のバーンアウトは,自尊感情の低下と看護職に対する絶望感の高まりにより,情緒的消耗感と脱人格化という形で生起した.さらに,脱人格化の進行により看護師の離職願望が高まることが示唆された.
著者
青柳 優子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.27-33, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
37
被引用文献数
7 2

目的:「医療従事者の倫理的感受性」の概念分析を行い,定義を明らかにすることである.方法:Rodgersの概念分析アプローチ法を用いた.データ収集には5つのデータベースPubMed,CINAHL Plus with Full Text,PsycINFO,医学中央雑誌web版,CiNii Articlesを使用した.検索用語は「ethical sensitivity」,「moral sensitivity」,「倫理的感受性」とし,計47件の論文を分析対象とした.結果:属性として5カテゴリー【倫理的状況に反応して感情が表れる】,【対象者中心の医療における自己の役割への責任感】【倫理的問題に気づく能力】【倫理的問題を明確にする能力】【倫理的問題に立ち向かう能力】を抽出した.先行要件には2カテゴリー,帰結には3カテゴリーを抽出した.結論:医療従事者の倫理的感受性は,倫理的問題の解決において意味をもち,問題を抽出するだけでなく立ち向かおうとすることを含む総合的な能力であった.
著者
中村 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_62-1_71, 2010-03-23 (Released:2011-08-15)
被引用文献数
10 8

目的:「冷え症」の概念分析を行い,冷え症の定義を明確にすることを目的とする.方法:Rodgersの概念分析のアプローチ法を用いた.データの収集方法は5つのデータベース,CINHAL Plus with Full Text(1982–2008),MEDLINE(1966–2008),Web of Science(1999–2008),医中誌Web(1983–2008),J-stage(1966–2008)を使用し,検索用語は,「chilliness」「chilly」「Hiesho」「poor circulation」「sensitivity to cold」とした.日本語では「冷え症」のみとした.その結果41文献全部を対象に概念分析を行った.結果:3つの属性,①「冷えている」という自覚がある,②温度較差が大きい,③寒冷刺激暴露後の皮膚温の回復が遅いと,2つの先行要件,①生体的要因(内的因子),②環境的要因(外的因子)が抽出された.さらに4つの帰結,①マイナートラブル,②苦痛,③対処行動,④病気の誘因が導き出された.分析の結果,本概念を「中枢温と末梢温の温度較差がみられ,暖かい環境下でも末梢体温の回復が遅い病態であり,多くの場合,冷えの自覚を有している状態」と定義した.結論:冷え症は先行要件から,生活環境の乱れなどが誘引となるため,予防医療の視点からも,生活環境の見直しへのケアに有用であるといえる.しかし,研究対象に民族的な偏りがあったため,今後は民族的側面からの研究が必要である.
著者
大森 純子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.12-20, 2004-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
27
被引用文献数
2 3

特定の農村地域に居住する高齢者にとっての健康の意味と行動パターンから彼らの捉える健康について記述することを目的に, エスノグラフィーを用い, S市内の通称1村に住む高齢者13名を含む23名の研究参加者への半構成的インタビューを中心にデータを収集し, 分析した.I村の高齢者の捉える健康とは『自分への誇りをもち続けられること』であった. 高齢者は【老化による身体の衰え】,【農業の機械化による役割の喪失】,【家族の一員としての立場の喪失】という抗えない現実の中で,【自身で何でもできる自分】,【農業を続けられる自分】,【家族の役に立つ自分】という自分への誇りをもち続けようと努力していた. その手段として,【働くこと】は誇りをもち続ける手立てであり,【仲間との結びつき】は誇りを支える心の拠りどころであった. そして, 状況に応じて自分への誇りを相互に補完させながら健康である自分を確認することができていた.高齢者自身の主体的な健康増進に向けた支援として, 従来の枠組みに囚われずに高齢者を総合的に理解し, 誇りと手段を支持することの重要性が示唆された.
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.3-12, 2013-12-20

要旨 目的:冷え症の妊婦と,そうではない妊婦での,微弱陣痛および遷延分娩の発生率の相違の分析および,因果効果の推定を行うことである. 方法:研究デザインは後向きコホート研究である.調査期間は2009年10月19日〜2010年10月8日までの12ヵ月であり,病院に入院中の分娩後の女性2,540名を分析の対象とした(回収率60.8%).調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ抽出である.分析では,共分散分析と層別解析にて傾向スコアを用いて交絡因子の調整を行った. 結果:冷え症であった女性は41.9%であった.微弱陣痛では,冷え症の回帰係数0.69,p<0.001,オッズ比2.00であった(共分散分析).遷延分娩では,冷え症の回帰係数0.83,p<0.001,オッズ比2.38であった(共分散分析). 結論:微弱陣痛では,冷え症である妊婦の微弱陣痛発生率の割合は,冷え症ではない妊婦に比べ,2倍であり,遷延分娩では約2.3倍であった.因果効果の推定では,冷え症と微弱陣痛ならびに遷延分娩の間で因果効果の可能性があることが推定された.
著者
青木 好美 片山 はるみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.55-64, 2017 (Released:2017-10-07)
参考文献数
31
被引用文献数
2

目的:希死念慮を持っている可能性がある自殺未遂患者にケアを提供する救急業務に従事する看護師の現状を明らかにすることを目的とした.方法:全国の救命救急センターのうち32施設に勤務する看護師764名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.結果:有効回答者は302名であり,そのうち206名(68.2%)の看護師が希死念慮を確認した経験があった.197名の看護師から得られた自由記述を質的記述的分析したところ,「希死念慮を確認することに支障となること」の設問に対する記述から【自殺未遂患者に対するケアについての知識不足・能力不足】【再自殺・自傷への心配や懸念】【確認しにくい環境】【患者の身体的・精神的問題】という4つのカテゴリが抽出された.結論:救急業務に従事する看護師が自殺未遂患者に対してケア遂行を促進するためには,看護師の知識の向上,ケアするための環境調整,看護師のサポートの充実の3点が必要であることが明らかになった.
著者
菅田 勝也 佐藤 鈴子 永田 朝子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.75-81, 1997
被引用文献数
2

夜間介護を行うための睡眠中断が介護者の睡眠に及ぼす影響を調べる目的で, 45歳の女性を被験者として, 試行2夜に続き, 病院の個室で夜間介護をした3夜と介護をしなかった自宅での1夜の連続4夜, および2週間後に自宅で2夜, 計6夜の睡眠ポリグラフィを実施し, 以下の結果を得た.<BR>1) 非介護3夜の睡眠時間のレソジは356~367分と安定していたのに比べ,介護した3夜は日による差が大きく,271~391分であった.<BR>2) 介護のための睡眠中断は, 強制覚醒によるものではなかったが, 3夜とも睡眠周期のリズムに乱れが認められた.<BR>3) 介護第1夜と第2夜は睡眠率が低く, 各睡眠段階率が類似していたが, 介護第3夜は前の2夜よりもむしろ介護をしなかった夜の睡眠に近かった.<BR>4)入眠潜時は介護第1夜から非介護第1夜にかけて日毎に短縮し, 介護第3夜と非介護第1夜は, 被験者の通常の睡眠である非介護第2夜, 第3夜と比べても短かった.<BR>これらは, 夜間介護による疲労の蓄積の影響の大きさを示唆するものである.
著者
川崎 優子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.277-285, 2016-02-24 (Released:2016-02-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目的:がん患者の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(NSSDM)の有効性を明らかにすることである.方法:対照群のがん患者は通常のサポートを受け,介入群のがん患者はNSSDMを用いた意思決定サポートを受けた.介入効果の判定は,不安尺度(STAI)と葛藤尺度(DCS)を用いて測定した.結果:研究に参加したがん患者は,対照群28名,介入群26名であった.STAIは面談前と面談後に有意な改善は認められなかった.DCSは下位尺度の較差において「情報」が有意に悪化(p=0.02)し,「価値の明確さ」は有意に改善(p=0.031)したが,価値の明確さは面談前に介入群の得点が有意に高かった.結論:NSSDMは価値の不明瞭さを低下させるという効果の可能性が示唆されたが,今後さらなる検討が必要である.一方,患者の中に新たな情報が増えることによりそれに対する葛藤が生まれる可能性もあることが示唆された.
著者
田中 雅美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.20-28, 2021 (Released:2021-06-10)
参考文献数
18

目的:生存の限界といわれる子どもへの医療選択において,母親が代理意思決定をどのように経験しているのかについて記述する.方法:母親ひとりに非構造化インタビューを行い,そのデータを現象学的方法で記述した.結果:母親が語る代理意思決定の経験は,「主体の置き去り」と「主体の取り戻し」の二つのテーマに分けられた.子どもは,医学的所見でカテゴリー化されることにより主体を剥奪され,母親は医療者の望む「お母さん」を演じることにより主体を覆い隠していった.しかし,母親は医療者たちが支援の一環として創る世界に巻き込まれることによって,次第にその世界を基盤とし,子どもと自身の主体を取り戻していった.結論:母性を絶対視した支援は,母親からの支援要請を断絶させたが,一方でその支援が時間の経過とともに母親の視点を変えるきっかけとなっていった.医療者は時に内観しつつ,支援を必要とする人々の内実に関心を向け続けることの大切さが示唆された.
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_3-4_12, 2013-12-20 (Released:2013-12-26)
参考文献数
31

目的:冷え症の妊婦と,そうではない妊婦での,微弱陣痛および遷延分娩の発生率の相違の分析および,因果効果の推定を行うことである.方法:研究デザインは後向きコホート研究である.調査期間は2009年10月19日~2010年10月8日までの12ヵ月であり,病院に入院中の分娩後の女性2,540名を分析の対象とした(回収率60.8%).調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ抽出である.分析では,共分散分析と層別解析にて傾向スコアを用いて交絡因子の調整を行った.結果:冷え症であった女性は41.9%であった.微弱陣痛では,冷え症の回帰係数0.69,p<0.001,オッズ比2.00であった(共分散分析).遷延分娩では,冷え症の回帰係数0.83,p<0.001,オッズ比2.38であった(共分散分析).結論:微弱陣痛では,冷え症である妊婦の微弱陣痛発生率の割合は,冷え症ではない妊婦に比べ,2倍であり,遷延分娩では約2.3倍であった.因果効果の推定では,冷え症と微弱陣痛ならびに遷延分娩の間で因果効果の可能性があることが推定された.
著者
呉 珠響 斉藤 恵美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-113, 2017 (Released:2017-10-31)
参考文献数
22

目的:本研究は,無年金または低年金の定住コリアン高齢者が経験した健康に関連する生活上の困難さを明らかにすることを目的とした.方法:研究参加者は,地域で生活する65歳以上の定住コリアン高齢者とした.Spradley(1979)のエスノグラフィックインタビューの手法を参考に,8名の参加者に1対1の半構造化面接を実施した.結果:収集したデータから70のサブカテゴリと8つのカテゴリを抽出した.カテゴリは,お金がないから生活が厳しい,1世は読み書きができない,地域に入っていくことは難しい,自分たちも日本人もどちらも関わろうとしない,人とのつながりをもつ重要性を認識しながらもつながりが持てない現実がある,よりどころがない,アイデンティティがひとつだけではない,社会へのあきらめの気持ちから地域に少しずつ染まるという8つで構成された.結論:看護職は,高齢の外国籍住民の多様な文化的背景や習慣の違いによる生活上の困難さを理解して,支援することが重要である.
著者
坂下 玲子 北島 洋子 西平 倫子 宮芝 智子 西谷 美保 太尾 元美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_91-1_97, 2013-03-20 (Released:2013-04-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

目的:臨床の看護職に適した看護研究のあり方を検討するための基礎情報を得るため,臨床における看護研究の現状を明らかにする.方法:全国の中・大規模の病院のうち,無作為抽出した3000病院に所属する看護研究推進担当者に対し,郵送法による質問紙調査を実施した.結果:回答は1130病院(回収率37.7%)から得られ,回答時100床以上であった病院1116を対象に分析を行った.本研究において,中・大規模の病院では,高い頻度で(88.4%),看護研究が実施されていることが明らかになった.その目的としては,「スタッフの教育」が最も優先順位が高く,次いで「患者サービス向上」「業務の改善」であった.研究法としては,質問紙法による実態調査が多く,研究期間は1年が多く,研究時間や研究資金は不十分であり,研究成果を論文として発表する率は低かった(14.8%).看護研究を進めるのに不足しているものとして,データ分析や研究法の知識・技術があげられ,また病院内で研究を指導する人が求められていた.結論:本研究により,病院で取り組まれている看護研究における課題が明らかになり,今後,臨床の看護職により実施される看護研究の目的を明確にするとともに,組織外のリソースを活用した研究支援の必要性が示唆された.