著者
涌井 秀樹 山下 純一 大渕 宏道 吉田 廣作 中本 安 三浦 亮
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.788-791, 1986
被引用文献数
1

症例は16才の女子高校生で修学旅行中に一過性の黒色尿を生じたため入院した.尿潜血反応は強陽性であつたが赤血球沈渣はみられなかつた.血清ビリルビン, LDH, GOT値の上昇と血清ハプトグロビン値の減少を認めた. Coombs試験, Ham試験, sugar water試験は陰性で赤血球浸透圧脆弱試験は正常であつた.運動負荷試験を行なつた.黒色尿は生じなかつたが血管内溶血の所見を得た.修学旅行後は通常の学校生活に戻つたが黒色尿はみられていない.以上より修学旅行中の長距離歩行によるmarch hemoglobinuriaと診断された.本邦報告例では圧倒的に青年男子の運動選手,特に剣道選手にみられるので,本症例はきわめてまれな例である.