著者
伊藤 健児 永島 英夫 深堀 隆彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.177-186, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
78
被引用文献数
2

新規アリルルテニウム(IV)錯体,Ru(η5-C5R5)L,2X(R=H or CH3;L=C0 or Ph3P; X=Cl or Br) または [Ru(η5-C5Me5)Cl2]2 に対するアリル基質の酸化的付加により合成し,R=CH3;X=Brの代表例につきX線構造解析を行った。これらアリルルテニウム錯体ならびに既知の[Ru(1-3:6-7:10-12-η-C12H18)Cl2を種々の有機金属試薬によりアルキル化し,多様なアルキル(アリル)ルテニウム(IV)錯体に誘導するとともに,この酸化状態にある炭素-ルテニウム(IV)結合の反応挙動を詳細に検討した。その結果,金属-炭素結合はCOtBuNC,アルケン類との反応においてまったく挿入活性を示さず,β-水素脱離と連続するヒドリドとアリル配位子間の還元的脱離をもっとも容易に起こす。C-C結合生成をともなう還元的脱離は80℃以上で進行し,いずれの場合もRu(II)化合物として安定化される。一方カチオン性のジエンルテニウム(II)活性種は第2のジエン分子と酸化的環化してC-C 結合を生成したのち,β脱離と還元的脱離による水素移動を連続して起こし,量論的および触媒的なプタジェンの二~三量化が高選択的に進行することを見いだした。