- 著者
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小山 豊
山岸 淳
宍倉 豊光
深山 政治
武市 義雄
- 出版者
- 千葉県農業試験場
- 巻号頁・発行日
- no.27, pp.169-183, 1986 (Released:2011-03-05)
オモダカの防除法確立のため,その生態的特性について検討を行った。1. 出芽特性 (1)塊茎には休眠性があり,休眠覚醒に対しては0℃の低温処理及び包皮除去処理の効果が認められた。(2)塊茎からの出芽深度は塊茎の大小により異なり,土中深い位置からの出芽歩合は塊茎が小さいほど低下した。1g以上の大きい塊茎は地表下20cmの深い層からも容易に出芽した。(3)土壌の還元程度が塊茎からの出芽に及ぼす影響は同じオモダカ科の中でも異なり,ウリカワに比べてオモダカは土壌の還元に対する適応力が大きかった。(4)塊茎は土壌水分が最大容水量の80%(対乾土60%)以上で出芽した。また,湛水深が15cmと深くても出芽は劣らず,水生雑草の特徴をよくあらわしている。2. 生育特性 (1)稲わらを施用した強還元条件でも生育はほとんど劣らず,塊茎形成量はかえって多くなった。(2)遮光処理により草丈,葉面積は大となったが,地上部乾物重は低下した。(3)本県産のオモダカには3種の種内変異が認められ,各々外観,出芽時期,塊茎形成量が異なった。(4)親塊茎の大小により生育及び塊茎形成量が異なった。生体重1gと2gとの間では明らかな差は認められなかったが,0.5g以下の小塊茎は他に比べ地上部生育量,塊茎形成量ともに少なかった。3. 塊茎形成に関する諸要因 (1)塊茎形成に入る時期の地上部の生育状態により塊茎形成数及び塊茎の大小,土中分布は著しく異なった。すなわち,地上部の生育量が大であるほど塊茎形成数,一個当り塊茎重量は大となり,形成される塊茎の土中分布も広い範囲にわたった。最高値は,塊茎形成数で180個/株,一個当り重量で1.7g,形成範囲は地表下30cmまで,水平距離で50cmまでであった。また,塊茎の重量は形成される深さが深いほど,株からの水平距離が遠いほど重くなった。(2)塊茎形成は短日処理により促進された。(3)遮光処理の時期・程度にかかわらず自然条件に比べ塊茎形成数が多くなり,ミズガヤツリ,クログワイと異なった反応を示した。