著者
深津 謙一郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.46-54, 1999

『重右衛門の最後』は、典型的な<近代批判>の言説のひとつであり、<西洋(近代)>に覆い尽くされたかに見える深層に、再発見されるべき起源の場所を提示することで、そこを核とする集団の同一性を制作する。しかしこうした語り口は、<近代>の進化論的時間と、それを包含するかたちで可視化された<西洋>中心の「地図」に基づくものであり、起源の場所が転倒した遠近法により遡行的に想像されたものであることを隠蔽する。