著者
松本 晴美 深澤 早苗
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.681-692, 2007-11-15
被引用文献数
3

健康上望ましい食意識・食行動の確立に及ぼす中学生の家庭での食生活環境と給食調理方式の影響を明らかにすることを目的として,給食が外部委託方式,センター方式,単独調理場方式の各2校,計6校の中学生の家庭の食生活状況,日常の食意識・食行動,学校給食に対する意識・評価,健康状態について調査を行い,それら相互の関連及び給食調理方式問の比較を行った.さらに,家庭における適切な食品摂取や夕食摂取状況は,中学生の健康的な食生活管理に対する意識を高め,そのことが学校給食での食教育や食料・食文化に対する関心の高さにつながっているという仮説をたて,パス解析による解明を試みた.分析対象は1年生から3年生計1,378名であり,以下の結果を得た.(1)中学生の家庭での食生活状況,日常の食意識・食行動,学校給食に対する意識・評価,健康状態では,各項目の回答割合や標準因子得点で学校間に有意差が認められた.学校給食が単独調理場方式である2校では,朝食及び獣鳥肉類,豆類,野菜類,果物類,牛乳の摂取頻度が高く,健康状態も良好であり,うち1校では給食に対する意識・評価が高かった.センター方式の1校では,学校給食に対する意識・評価の6つの標準因子得点のすべてが6校中最も高かった.とくに第I因子「嗜好」の得点が他校に比べて極めて高く,成人期の健康に対する関心も高かったが,他の1校とともに家庭での食品摂取状況が適切でなく,健康度が低かった.外部委託方式である2校では,学校給食に対する意識・評価の6つの因子の標準得点すべてが他の4校に比べて低く,うち1校では家庭での朝食摂取や食品摂取状況が最も不適切であり,精神的健康度が低かった.(2)学校給食に対する意識・評価の潜在変数を「食教育への関心」と「文化・社会性」,日常の食意識・食行動の潜在変数を「安全性・栄養表示への関心」と「摂食行動」,家庭での食生活状況の潜在変数を「食品摂取状況」と「夕食摂取状況」としてパス解析を行った結果,豆類や魚類のような伝統的な食品の摂取に配慮された家庭での食事内容や,楽しく会話の多い夕食摂取状況が,食品の安全性や栄養表示への関心,健康に配慮した望ましい摂食行動を伴う日常の食意識・食行動に大きく影響し,そのような食意識・食行動が,学校給食における食教育や地域の食文化,食料生産に対する意識や関心を高めていることが示された.