著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.731-738, 2003-09-15
参考文献数
11
被引用文献数
4

着心地の良いブラジャーの設計や新しい設計システムを構築するためには,複雑に動く乳房の運動機構やブラジャー着用に伴う乳房振動特性の変化を明らかにしておくことが重要である.そこで,本研究では半透明なブラジャーを用いて,運動画像解析システムにより,ブラジャー着用時と非着用時の走行中と歩行中の乳房の動きを計測した.乳房の動きから体幹部の動きを分離し,乳房独自の振動データを抽出した後,離散フーリエ変換によって分析した.その結果,乳房の振動は歩行周期の影響を直接に受け,走行中が歩行中より,垂直方向が水平方向より大きくなった.ブラジャー非着用時の垂直方向の振幅は歩行周波数で最大となり,体幹部の運動の影響を強く受けることが分かった.非着用時の乳房振動は乳房の硬さ指標と相関が高く,柔らかい乳房が硬い乳房より振幅が大となった.ブラジャーの着用によって,乳房の振幅スペクトルに高い周波数成分が生じるようになり,測定点間の相関も低くなった.またブラジャー着用時の乳房が硬い乳房に近くなり,両者の特性が似たものとして表れた.以上のように乳房振動を分析し,その特性をとらえることができた.乳房の振動特性は,ブラジャーの着くずれや着心地に関係する問題を含み,設計に欠かすことのできない要因である.ブラジャーの設計支援システムの中で,乳房の振動特性をどのように制御するかが重要な課題である.今後は胸部の3次元形状データのモデルを利用して,運動機能性のよいブラジャー設計の技術開発につなげたいと考えている.
著者
長津 美代子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.949-959, 1991-11-15
被引用文献数
2 2

The purpose of this study is to explore gaps between attitudes toward gender roles of male and female students, by using such criteria as attitudes toward role relationships between male and female, the double standard of sexual morals, men's leadership in dating, and energy allocation to occupation and homemaking after marriage. The survey was conducted in January, 1990 to 735 university students in Tokyo and its outskirts. The major findings are as follows : (1) ISRO (The Index of Sex-Role Orientation, E.A. Dreyer et al.) scores on attitudes toward role relationships between male and female point out that 45% of the female students are innovative type, but about the half of the male students are traditional one. (2) Compared with female students, male students tend to accept the double standard of sexual morals. (3) Female students expect that males play leadership roles when they go out together more than male students themselves intend to. (4) Male students wish to allocate less energy to occupation than their fathers do, arid female students hope to allocate less energy to homemaking than their mothers. As a result, the present tendency to give too much attachment to occupation for males and homemaking for females will bc relieved in their married life. (Received January 5, 1991)
著者
三野 たまき 上田 一夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.255-267, 1998-03-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では, 静立位の浴衣圧・それに対する官能評価・体型・浴衣の着崩れとの関係をSPEARMANの順位相関を用いて検討した.被験者は20~30歳代の成人女子5名であった.浴衣圧(液圧平衡法を使用)は呼吸運動や動作などの様々な因子によって変化した.浴衣圧は主に腹部に発生していた.最も高い圧が計測されたのは帯の下層の, 浴衣と腰紐との間の水平面であった(静立位では10.7±9.7mmHg(14.6±13.2gf/cm^2), 正座位では18.9±10.8mmHg(25.7±14.7gf/cm^2)).トップバストとアンダーバストの差が大きい被験者ほど, 胸元の着崩れ量が多かった.右脇線の着崩れ量は腰紐の締め方に依存した(20mmHg(27g/cm^2)を超えないように, 腰紐をしめるべきである).胸元の着崩れ量が多い被験者ほど, 圧感覚(締め感覚)の大きさは小さかった.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.379-388, 2005-06-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

To clarify the characteristics of breast vibration and brassiere dislocation during running, movements of five spots on the breast surface, that of the same five spots on transparent brassieres after removing brassiere caps to visualize the breast surface, and the clothing pressures of the corresponding five spots were simultaneously monitored using an image analyzing system. The subjects for our experiment were young women with had hemispheric breasts. Obtained data of those movements and pressure were analyzed using the discrete Fourier transform. The breasts in a brassiere were vibrated at the same frequency of running. The dislocation of the brassiere from the breast surface which was observed was associated with changes in the clothing pressure at the lower half of the brassiere. Vibration of the breasts of the subjects wearing spots brassieres was move obvious in the vertical direction, while vibration of the breasts of the breasts of the subjects wearing full-cup brassieres was more obvious in the horizontal direction.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.379-388, 2005-06-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

To clarify the characteristics of breast vibration and brassiere dislocation during running, movements of five spots on the breast surface, that of the same five spots on transparent brassieres after removing brassiere caps to visualize the breast surface, and the clothing pressures of the corresponding five spots were simultaneously monitored using an image analyzing system. The subjects for our experiment were young women with had hemispheric breasts. Obtained data of those movements and pressure were analyzed using the discrete Fourier transform. The breasts in a brassiere were vibrated at the same frequency of running. The dislocation of the brassiere from the breast surface which was observed was associated with changes in the clothing pressure at the lower half of the brassiere. Vibration of the breasts of the subjects wearing spots brassieres was move obvious in the vertical direction, while vibration of the breasts of the breasts of the subjects wearing full-cup brassieres was more obvious in the horizontal direction.
著者
沼形 泰枝 江角 由希子 小原 郁夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1217-1222, 1999-12-15
参考文献数
26
被引用文献数
1

市販のミネラルウォーターに対する嗜好性を女子短大生と雌ラットで調べた.ミネラルウォーター中のCa, Mg, NaおよびKの含有量は原子吸光分析法,硬度はキレート滴定法で測定した.次に,正常な味覚感受性である女子短大生を経験者とし,ミネラルウォーター4種と水道水を試料として官能評価を行った.一方,ラットは8週齢雌を用いて二瓶選択法により嗜好性試験を行った.ミネラルウォーターの中のCaおよびMgの含有量はラベル表値よりも低く,NaおよびKは高かった.また,硬度はCaおよびMgの含有量から算出される値の薬1.2倍を示した.官能評価に用いたミネラルウォーターの硬度は11.5, 58.3, 81.3, 332.3, 534.0mg/lであり,水道水は38.3mg/lであった.女子短大生,雌ラットとも硬度58.3mg/lのミネラルウォーターにおいて嗜好性が最も高く,硬度300mg/l以上では嗜好性が低下した.これらの結果は,女子短大生と雌ラットにおけるミネラルウォーターの嗜好性は類似しており,硬度約50mg/lが飲み水として最もおいしいということを示唆した.また,ミネラルウォーターにおいてもおいしさの指標をして硬度が使用できることが確認された.
著者
斎藤 瑠美子 勝田 啓子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-206, 1989-03-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

古代乳製品である蘇は製造されてから利用されるまでの期間, 少なくとも4ヵ月は保存可能な食品でなければならない. そこで蘇の製法の再現実験を試みるとともに保存性について検討するために水分活性に焦点をあて, 再現試料の妥当性を検討し, 次のような結果を得た。水分含量の異なる濃縮牛乳の水分含量と水分活性測定により等温吸着曲線と類似の曲線を得ることができた.この結果をもとに, 最も水分の少ない濃縮率 14 % のもの (S-14), エメンタールチーズの水分に近い濃縮率 18%のもの (S-18), その中間の濃縮率 16 % (S-16) を蘇の再現試料とし, 保存中の外観変化, 水分含量および水分活性の変化をビーカーを用いて検討した結果, S-16および S-18 は調製から 10 日目にカビの発生がみられ, 水分活性は 0.90 から 0.94 であった. S-14 は1カ月後もカビの発生はみられず, 水分活性は 0.80 以下を保ち続けていた. また水分含量も約 10 % と低い値を示した.一方, 素焼きの壼による保存では4ヵ月後には水分含量は 5.6 % と調製時より下降し, 水分活性は 0.65 と単分子層域の数値を示していた.したがって, 「延喜式」などの蘇の製法にもとついて保存性を重視し, 本実験のようにホルスタイン種の牛乳を用いて蘇の製法の再現を行った場合は, 牛乳を濃縮率 14 % まで加熱濃縮したもの, すなわち S-14 が古代乳製品蘇に最も類似したものであると考えられる.
著者
大矢 英世 天野 晴子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.125-135, 2018 (Released:2018-03-09)
参考文献数
32

This study clarifies the formation of awareness of gender equality among male preparatory school students through home economics classes. Retrospective descriptions of student learning were analyzed using M-GTA. The results showed that students at male preparatory schools had little interest in their private lives, and demonstrated a gender-biased orientation to life. However, through the experience of welfare facilities and exchange classes with students at a women's high school, they experienced a culture shock by learning about the reality of welfare and women's viewpoints which shook their male-oriented view of life and which led to many conflicts. By the end of the academic year, they had begun to search for a lifestyle unconstrained by gender, one that tackled the challenge of life planning from the standpoint of women based on the above study.
著者
村上 恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.120-128, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
15

本研究では,ゆで水に添加するNaCl の濃度を0%,0.2%,1%,2%に変化させて4種類のスパゲティをゆで,NaCl の硬さへの影響を検討した. ゆでスパゲティの破断応力は,0% NaClと比較して2% NaClで高くなる傾向を示したことから,2%のNaCl添加によりスパゲティは硬く茹で上がると考えられた.ゆでスパゲティの水分含量も2% NaClで減少し,スパゲティの染色実験においても,2% NaClによりゆで後スパゲティの未染色部の割合が増加していたことから,スパゲティへの水分吸収の遅れや水分含量の減少がスパゲティを硬くする要因として関与していると考えられた. さらに,グルテンをNaClを添加したゆで水でゆでたところ,20% NaClでグルテンの水分含量は有意に低値を示したが,2%以下のNaCl添加では水分含量に有意な差はみられなかった. 以上の結果より,ゆで水に通常使用する1%のNaCl 添加では,スパゲティの硬さには影響しないことがわかった.また,2% NaCl添加でスパゲティは硬くなる傾向を示したが,それはグルテンのNaClによる収斂作用以外の他の要因が関与していると考えられた.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.743-751, 2006-11-15
参考文献数
7

ブラジャーは女子の肌に密着するファンデーションとして,消費者の感性的ニーズをデザインに反映させる必要がある.消費者の好みや感性をデザインに活かすには,評価した人の特性を評価し,類型化することが必要となる.そこで,本研究では日本人若年女子193名にタイプの異なるブラジャー5種を対象として官能評価を行わせ,ブラジャーの特性を明らかにした上で,判定者の類型化を行った.ブラジャーに共通した因子として,ズレ感,揺れ感,圧迫感,整容感,背面・脇押え感を抽出した.特にズレ感や揺れ感の因子は寄与率が高く,また総合的な着心地との相関が高かった.タイプ別に導出した判定者の因子スコアを原データとしてクラスタ分析を行い,判定者を4クラスタにパターン分類した.クラスタごとに官能評価結果を分析することにより,評価の深層を浮かび上がらせることが可能になるということが示唆された.さらに評価結果は,判定者がブラジャーについてどのような感覚が強いか,ひいてはブラジャーに何を要求しているかを表すものと考えることができる.判定者が多ければ,判走者のクラスタはそのまま消費者のクラスタと考えられ,官能評価分析の結果をニーズに基づく商品設計に応用できるはずである.しかし,官能評価の判定者の反応が多様であることから,官能評価の方法や商品設計について考えさせられる点が多かった.本研究では4クラスタに分類したが,ほとんどの項目に中間の評価をするクラスタ1の判走者が多く含まれる官能評価では明瞭な結果が得られない可能性が高くなるし,クラスタ2とクラスタ3のように反応差が大きい判定者が混じっている場合も平均化されて暖味な結果に終わることが考えられる.消費者の感性を商品に反映し,質の向上を図るためにはクラスタごとに官能評価結果を分析して深層を浮かび上がらせることの重要性が示唆された.
著者
工藤 美奈子 小泉 昌子 山本 遼 倉田 幸治 千代田 路子 有泉 雅弘 峯木 眞知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.664-672, 2021 (Released:2021-10-30)
参考文献数
23

キャベツは, カット野菜の需要に伴い、食品企業において食品ロス対策の重要な野菜であり、家庭でも食品ロスとして問題になる. 食品ロス対策としてキャベツの有益な利用方法を見出すことを目的として, キャベツの芯部の活用方法について検討した. キャベツの芯部の特性を把握するために, キャベツを葉部, 芯部, 芯上部, 維管束部, 中心部, 芯周辺葉部に分けて重量を測定した. また, これらの部位の一般成分, 遊離アミノ酸, 糖分, においの成分を測定した。芯の維管束部には好まれないにおいがあったため, 10種の調味料および香辛料を添加した液を用いて, キャベツの芯のにおい抑制効果を検討した。その結果より, 味の好みについて高い値を示した3種の調味料および香辛料を添加した液を用いてギョウザ試料を調製した。ギョウザのたね試料のテクスチャーと水分含有率を測定後, ギョウザ試料の官能評価を実施した. 重量測定より, 芯部の重量は採取時期による差がみられないことが明らかとなった. 成分分析より, 芯部は葉部と比較して, 糖含量全体で1.5倍, スクロースを9.3倍含有し, 糖含量が多いため甘いことが示唆された. ギョウザたねに活用するには, 白ワインやローリエ, 味噌の使用が味の好みの向上に効果的であった. 本研究より, キャベツの芯部は特性を考慮すると有益に活用できる部位であり, ギョウザへの活用を示唆し, 食品ロス削減に寄与できる未利用資源であることが判明した.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.731-738, 2003-09-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
5

着心地の良いブラジャーの設計や新しい設計システムを構築するためには, 複雑に動く乳房の運動機構やブラジャー着用に伴う乳房振動特性の変化を明らかにしておくことが重要である.そこで, 本研究では半透明なブラジャーを用いて, 運動画像解析システムにより, ブラジャー着用時と非着用時の走行中と歩行中の乳房の動きを計測した.乳房の動きから体幹部の動きを分離し, 乳房独自の振動データを抽出した後, 離散フーリエ変換によって分析した.その結果, 乳房の振動は歩行周期の影響を直接に受け, 走行中が歩行中より, 垂直方向が水平方向より大きくなった.ブラジャー非着用時の垂直方向の振幅は歩行周波数で最大となり, 体幹部の運動の影響を強く受けることが分かった.非着用時の乳房振動は乳房の硬さ指標と相関が高く, 柔らかい乳房が硬い乳房より振幅が大となった.ブラジャーの着用によって, 乳房の振幅スペクトルに高い周波数成分が生じるようになり, 測定点間の相関も低くなった.またブラジャー着用時の乳房が硬い乳房に近くなり, 両者の特性が似たものとして表れた.以上のように乳房振動を分析し, その特性をとらえることができた.乳房の振動特性は, ブラジャーの着くずれや着心地に関係する問題を含み, 設計に欠かすことのできない要因である.ブラジャーの設計支援システムの中で, 乳房の振動特性をどのように制御するかが重要な課題である.今後は胸部の3次元形状データのモデルを利用して, 運動機能性のよいブラジャー設計の技術開発につなげたいと考えている.
著者
西尾 幸一郎 中野 誠也 杉林 一哲 松原 斎樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.679-684, 2010-10-15 (Released:2013-06-24)
参考文献数
20

This research aims to estimate the states of sleep / wake time from measurement records of physical activity using an actigraph and to clarify the effect that sleep / wake time has on students living in a dormitory, both with and without roommates. Discoveries made as a result of the study are as follows:1) In subjects with roommates, regression in sleep-onset time and a reduction in night sleeping time were observed (p<0.01,p<0.05).2) In subjects with roommates, daytime sleep increased (p<0.1), while the average amount of activity during the day decreased (p<0.1). Furthermore, several cases were observed in which students with roommates slept approximately 1 hour during classes, something that was not observed among subjects without roommates. It was also confirmed that this had a major influence on attitude in class, etc.
著者
西村 公雄 宮本 有香 樋笠 隆彦
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.605-615, 2004-08-15
被引用文献数
6

75℃で真空調理加熱した鶏ささ身は, 100℃で加熱したものより有意に収縮が弱くかつ,やわらかく仕上がった.両試料のヒドロキシプロリン量に,有意な差はなく,走査電子顕微鏡観察においても微細構迫間に顕著な差は観られなかった.ミオシンを両温度で加熱後その凝集状態を透過電子顕微鏡で観察したが,状態に差は認められなかった.しかしながら,接触しているタンパク質同士を結合する試薬1-ethyl-3-carbodiimideを用いて得られたミオシン凝集体の電気泳動パターンは,明らかに100℃加熱した方が75℃加熱したミオシンより重合化が進んでいることを示していた.このことは, 100℃加熱で形成されたミオシン凝集体がよりコンパクトな構造を持っていることを示している.
著者
奥嶋 佐知子 高橋 敦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.957-967, 2009-11-15 (Released:2012-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1

We prepared soup stock samples from bonito and kombu, niboshi and kombu, beef and vegetable and chicken with mineral water of differing hardness. The mineral content of each was measured (distilled water, 0 mg/l ; soft water, 28 mg/l ; hard water, 303 mg/l ; and very hard water, 1,427 mg/l ), and sensory tests were conducted to evaluate the effect on stock taste of the mineral water hardness. The soup stock samples of bonito and kombu and niboshi and kombu had comparable palatability between hard water and soft water, but very hard water resulted in low preference. The calcium content of the soup stock from bonito and kombu and from niboshi and kombu prepared with hard water was 2-3 times higher than that of the equivalent soup stock prepared with soft water. Using hard water to prepare soup stock that is often used in Japanese food appears promising as a method of calcium supplementation. The palatability of beef and vegetable soup stock was most favorable when made with hard water, the calcium content of this stock prepared with hard water being 1.9 times higher than that of beef and vegetable soup stock made with soft water. Unlike the other samples of soup stock, the chicken stock prepared with very hard water was assessed as moderately palatable. Since its calcium content is more than 10 times that of soft water, very hard water has proven value in soups and one-pot dishes.
著者
斎藤 瑠美子 勝田 啓子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-206, 1989

古代乳製品である蘇は製造されてから利用されるまでの期間, 少なくとも4ヵ月は保存可能な食品でなければならない. そこで蘇の製法の再現実験を試みるとともに保存性について検討するために水分活性に焦点をあて, 再現試料の妥当性を検討し, 次のような結果を得た。<BR>水分含量の異なる濃縮牛乳の水分含量と水分活性測定により等温吸着曲線と類似の曲線を得ることができた.この結果をもとに, 最も水分の少ない濃縮率 14 % のもの (S-14), エメンタールチーズの水分に近い濃縮率 18%のもの (S-18), その中間の濃縮率 16 % (S-16) を蘇の再現試料とし, 保存中の外観変化, 水分含量および水分活性の変化をビーカーを用いて検討した結果, S-16および S-18 は調製から 10 日目にカビの発生がみられ, 水分活性は 0.90 から 0.94 であった. S-14 は1カ月後もカビの発生はみられず, 水分活性は 0.80 以下を保ち続けていた. また水分含量も約 10 % と低い値を示した.一方, 素焼きの壼による保存では4ヵ月後には水分含量は 5.6 % と調製時より下降し, 水分活性は 0.65 と単分子層域の数値を示していた.<BR>したがって, 「延喜式」などの蘇の製法にもとついて保存性を重視し, 本実験のようにホルスタイン種の牛乳を用いて蘇の製法の再現を行った場合は, 牛乳を濃縮率 14 % まで加熱濃縮したもの, すなわち S-14 が古代乳製品蘇に最も類似したものであると考えられる.
著者
大村 知子 山内 幸恵 平林 優子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.393-402, 2008-06-15

人体の動作により衣服にはひきつれやだぶつきといった着くずれが生じる.本研究では,姿勢変化の過程における人体とパンツの軌跡を三次元動作解析システムにより捉え,動作により人体とパンツがずれるプロセスの解明を試みた.また,ずれの量や方向についてパンツ別,被験者別,動作別に比較を行った.主な結果は次のとおりである.(1)ずれの量は開口部で大きく,ずれは皮膚の伸展の大きい部位に向かって生じた.(2)ずれはアンクルラインやニーラインなど衣服にゆとりが多い部位で先に生じ、それからウエストラインなど衣服のゆとりが少ない部位で徐々に生じる傾向にあった.また,ずれは水平方向や横方向へ先に生じ,その後に垂直方向に生じる傾向にあった.(3)股上が浅く,ゆとりの大きいパンツは,後ウエストラインにおいて下方へのずれの量が大きかった.立位から蹲踞への動作では立位から椅座への動作よりウエストラインにおいて後方へのずれの量が大きかった.また,ずれの量や方向は被験者の着衣の仕方や好みに影響を受けた.
著者
岡部 和代 黒川 隆夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.743-751, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ブラジャーは女子の肌に密着するファンデーションとして, 消費者の感性的ニーズをデザインに反映させる必要がある. 消費者の好みや感性をデザインに活かすには, 評価した人の特性を評価し, 類型化することが必要となる.そこで, 本研究では日本人若年女子193名にタイプの異なるブラジャー5種を対象として官能評価を行わせ, ブラジャーの特性を明らかにした上で, 判定者の類型化を行った. ブラジャーに共通した因子として, ズレ感, 揺れ感, 圧迫感, 整容感, 背面・脇押え感を抽出した. 特にズレ感や揺れ感の因子は寄与率が高く, また総合的な着心地との相関が高かった. タイプ別に導出した判定者の因子スコアを原データとしてクラスタ分析を行い, 判定者を4クラスタにパターン分類した. クラスタごとに官能評価結果を分析することにより, 評価の深層を浮かび上がらせることが可能になるということが示唆された. さらに評価結果は, 判定者がブラジャーについてどのような感覚が強いか, ひいてはブラジャーに何を要求しているかを表すものと考えることができる. 判定者が多ければ, 判定者のクラスタはそのまま消費者のクラスタと考えられ, 官能評価分析の結果をニーズに基づく商品設計に応用できるはずである. しかし, 官能評価の判定者の反応が多様であることから, 官能評価の方法や商品設計について考えさせられる点が多かった. 本研究では4クラスタに分類したが, ほとんどの項目に中間の評価をするクラスタ1の判定者が多く含まれる官能評価では明瞭な結果が得られない可能性が高くなるし, クラスタ2とクラスタ3のように反応差が大きい判定者が混じっている場合も平均化されて曖昧な結果に終わることが考えられる. 消費者の感性を商品に反映し, 質の向上を図るためにはクラスタごとに官能評価結果を分析して深層を浮かび上がらせることの重要性が示唆された.