著者
中山 毅 西原 富次郎 深田 せり乃
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.105-110, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

食欲不振や嘔吐の症状を伴った妊娠悪阻の患者を対象とし,六君子湯による悪阻への治療の可能性についての後方視的検討を行った。方法は,北川らの提唱するEmesis index(EI)を用い,小半夏加茯苓湯内服,メトクロプラミドを投与した群を比較対照とした。すべての群において,内服後のEI 合計値の低下を認めたが,特に六君子湯群7日後のEI 合計値が,他群より有意に低下していた。また項目別の検討では,六君子湯群における悪心,嘔吐,食欲低下のスコア値が,小半夏加茯苓湯,メトクロプラミド投与群と比較し有意に低値であった。六君子湯が妊娠悪阻に対して,小半夏加茯苓湯やメトクロプラミド投与と同等に効果があり,特に悪心嘔吐や食欲低下といった症状の強い妊娠悪阻を軽快させる可能性が示唆された。また奏功しない症例の多くは気滞スコアが高い傾向にあり,随証療法の必要性,ならびに理気剤への変方を考慮することが必要であろう。