著者
深谷 俊郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.246-253, 1991-02-20
被引用文献数
1

蓚酸カルシウム結石に対するsodium pentosan polysulphate (SPP) の抑制活性について以下の3点から実験的検討を加えた. 1) 蓚酸カルシウム結晶形成, 凝集及び成長に対する抑制活性. 2) ラット実験結石モデルにおけるSPPの効果. 3) ヒトにおけるSPPの投与効果について, 尿中蓚酸カルシウムのmetastable limitの変化, および蓚酸カルシウム結晶成長に対する尿の抑制活性の変化. 結果は以下の通りであった. 1.Aggregometerを用いて測定した蓚酸カルシウム結晶形成は, 1mM以上の濃度のSPPの添加により抑制されることが確認された. 2.Coulter counterを用いた結晶凝集抑制活性の検討では, SPPは低濃度 (0.02μM) から抑制活性を示した. 3.〔<14>^C〕を用いたseeded crystal 法による結晶成長の面での検討では, SPPは低濃度から濃度依存的に抑制活性を示すことが確認された. 4.Ethylene glycol (0.4%) の投与されたratの腎尿細管内に誘発される修酸カルシウムの結晶沈着は, SPPの筋肉内投与 (30mg/kg/day, 60mg/kg/day) により抑制されることが期待された. 5.健康成人男子5名でSPP250mgを1日2回5日間経口投与し, その前後に24時間尿を採取した. 各尿において, 尿中蓚酸カルシウムのmetastable limit, および蓚酸カルシウム結晶成長抑制活性の測定を行い, 前者ではSPP投与後に上昇する傾向が見られたが, 後者では一定の傾向が得られなかった.