著者
高橋 輝昌 添谷 稔 戸田 浩人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.127-133, 1996-05-16
被引用文献数
12

同一斜面の上下に隣接するスギおよびヒノキ壮齢人工林における元素の垂直的な移動特性を明らかにするために, A_0層, 鉱質土壌層, リターフォール, 林外雨, 林内雨およびA_0層通過雨(スギ林のみ)に含まれる元素量と土壌水中での元素濃度, 土壌中の元素通過量を調査した。スギ林のA_0層量はヒノキ林の2倍の18t ha^<-1>であった。スギ林では鉱質土壌中の全C, N量, 交換性塩基量がヒノキ林よりも多く, 特に交換性Caでは500kg ha^<-1>とヒノキ林の4.2倍であった。スギ林のリターフォール量はヒノキ林の1.2倍の5.2t ha^<-1>であり, 元素含有量も同様にスギ林で多い傾向であった。林外雨から林内雨にかけて, H^+量はヒノキ林で2/3, スギ林では1/3に減少し, それぞれ0.2, 0.1kg ha^<-1>になった。スギ林の林内雨中のN, K, Ca, Mg量は19.4, 22.7, 29.1, 5.0kg ha^<-1>であり, それぞれヒノキ林の0.8, 1.4, 1.3, 1.2倍となった。スギ林のA_0層通過雨のH^+量は林内雨の1/10であった。ヒノキ林の土壌水中ではNO^-_3がほとんど溶存しておらず, Ca^<2+>, Mg^<2+>濃度はスギ林と比較して極めて低かった。土壌深5 cmのN, K, Caの通過量はヒノキ林では林内雨の溶存量とほぼ等しかったが, スギ林では2〜3倍であった。