著者
平井 康夫 郭 宗正 清水 敬生 中山 一武 手島 英雄 陳 瑞東 浜田 哲郎 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 増淵 一正 佐野 裕作 平田 守男
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1707-1710, 1988-11-01

1971年より1985年の間に, 癌研婦人科で初回治療として開腹手術を施行した子宮体癌連続235症例について, 術中腹水細胞診を施行し, 進行期別に再発や生存率との関連を検討し以下の成績を得た. 1. 腹水細胞診の陽性率は, 全体で18.7% (235例中44例), I期 14.5% (173例中25例), II期 21.2% (33例中7例), III期 32.0% (25例中8例)であつた. 2. I期体癌の腹水細胞診陽性例のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた20例の5年および10年累積生存率は, それぞれ94.7%, 94.7%であり, 陰性例の92.7%, 90.9%とくらべ, 有意差を認めなかつた. また, この期の再発率は, 細胞診陽性例で12.0%, 陰性例で9.5%であり, 両者に有意差を認めなかつた. 3. II期およびIII期体癌のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた9例の生存率と, 同期の腹水細胞陰性例47例の生存率との間にも有意差を認めなかつた. 4. 子宮体癌においては, 術中に肉眼的腹膜転移を認めない場合は, 術中腹水への悪性細胞の出現の有無は, 予後と関連しなかつた.
著者
加藤 友康 清水 敬生 梅澤 聡 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1337-1342, 1994-12-01
被引用文献数
2

直腸に直接浸潤もしくは播種巣を形成した卵巣癌症例に対する, neoadjuvant 化学療法(NA化療)後の直腸合併切除の意義について検討した. 1988年7月から1992年12月までに当科でNA化療後に直腸合併切除を行ったIIIc期7例, IV期4例(漿液性腺癌10例, 類内膜腺癌1例)を対象とした. IIIc期例は試験開腹後にNA化療を開始した. IV期例ではPerformance status (PS)が悪いため試験開腹は施行せず, まず癌性胸腹水に対して免疫療法を施しPSの改善を図った後, ただちにNA化療を開始した. 化療のレジメンはCP (cyclophosphamide: 500mg/m^2, day 1; cisplatin: 10mg/m^2, day 1〜7)であり, 4〜6コース投与した. 効果はPartial Response 9例, Minor Response 1例, No Change 1例であった. NA化療後, 子宮・卵巣・直腸をen blocに摘出した. 人工肛門が造設されたのは計画的に骨盤内臓全摘術を行った1例のみであった. 上腹部臓器に転移巣が残存した5例は, 可及的に摘出した. 術後の残存腫瘍径は, 残存腫瘍なしが5例, 0.5cm未満が2例, 2cm未満が3例, 2cm以上が1例であった. 術後合併症例はみられず, 術後治療によるPSの改善が効を奏したと思われる. 11例の全生存期間(5例死亡)は平均26.8ヵ月であった. なお, 残存腫瘍径が0.5cm未満の症例7例(2例死亡)中, 2年未満の死亡例はなかった. 直腸合併切除及び播種巣の可及的切除により残存腫瘍径を0.5cm未満にすることが可能な症例では, NA化療後の直腸合併切除はQuality of Lifeを損ねることなく, 予後に大きなimpactを与えると期待できる.