著者
己斐 澄子 手島 英雄 南 敦子 片瀬 功芳 山脇 孝晴 星 利良 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 都竹 正文
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1048-1053, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

閉経後の患者で, 細胞診で老人性変化が主体で一部にHPV感染を疑う所見を認めたが, 十分なHPV感染細胞所見を示さなかった8症例にエストロゲン (プレマリン) 負荷を施行した. 抱合型エストロゲン, プレマリン1.25mgを2週間経口投与した. 投与前は少数のkoilocyteやparakeratocyteを認めただけであったが, 投与後は, 炎症性背景が消失し, parakeratosis 100%(8/8), koilocytosis 75%(6/8), smudged様濃染核75%(6/8), giant cell 50%(4/8), multinucleation62.5%(5/8) の率でHPV感染に特徴的な細胞所見が出現した.HPV-DNAは, Southern blot法で5例を検索し, 100%(5/5) 陽性であった. ISH (in situ hybridization) 法で他の3例を検索し, 33%(1/3) がHPV-DNA陽性であった.エストロゲン投与は, 老人性膣炎と悪性細胞を鑑別するだけでなく, 老人性膣炎でのHPV感染診断に有用であった. 老人性変化, 老人性膣炎症例でHPV感染を示唆する細胞が出現している場合, エストロゲン (プレマリン) 投与により, さらにHPV感染細胞所見が明瞭となることがわかった.
著者
平井 康夫 郭 宗正 清水 敬生 中山 一武 手島 英雄 陳 瑞東 浜田 哲郎 藤本 郁野 山内 一弘 荷見 勝彦 増淵 一正 佐野 裕作 平田 守男
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1707-1710, 1988-11-01

1971年より1985年の間に, 癌研婦人科で初回治療として開腹手術を施行した子宮体癌連続235症例について, 術中腹水細胞診を施行し, 進行期別に再発や生存率との関連を検討し以下の成績を得た. 1. 腹水細胞診の陽性率は, 全体で18.7% (235例中44例), I期 14.5% (173例中25例), II期 21.2% (33例中7例), III期 32.0% (25例中8例)であつた. 2. I期体癌の腹水細胞診陽性例のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた20例の5年および10年累積生存率は, それぞれ94.7%, 94.7%であり, 陰性例の92.7%, 90.9%とくらべ, 有意差を認めなかつた. また, この期の再発率は, 細胞診陽性例で12.0%, 陰性例で9.5%であり, 両者に有意差を認めなかつた. 3. II期およびIII期体癌のうち, 術中に腹膜転移を認めないのに腹水細胞診が陽性であつた9例の生存率と, 同期の腹水細胞陰性例47例の生存率との間にも有意差を認めなかつた. 4. 子宮体癌においては, 術中に肉眼的腹膜転移を認めない場合は, 術中腹水への悪性細胞の出現の有無は, 予後と関連しなかつた.
著者
山脇 孝晴 手島 英雄 竹島 信宏 山内 一弘 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-334, 1996-05-01
被引用文献数
6

子宮体部明細胞腺癌 (以下明癌) 症例および一部に明細胞腺癌成分を含む内膜型腺癌 (以下一部明癌) 症例の臨床病理学的検討を行い, 以下の成績を得た。1. 癌研究会附属病院婦人科にて, 1950〜1994年に初回治療を行った子宮体癌1,152例中, 明癌は16例 (1.4%), 一部明癌は21例 (1.8%) であった。2. 累積生存率の算定にKaplan-Meier法を用いると, 明癌, 一部明癌は, それぞれ, 子宮体癌全体に比し, 有意に予後不良であった (p<0.001) 。3. 明癌のsubtypeは, papillary 5例 (31%), solid 9例 (56%), tubulocystic 2例 (13%) であった。4. 明癌において, hyaline body 8例 (50%), bizzare nucleus 7例 (44%), psammoma body 5例 (31%), 壊死6例 (38%), リンパ球を主体とした細胞浸潤8例 (50%), リンパ管侵襲5例 (36%), 血管侵襲4例 (29%) および異型内膜増殖症1例 (7%) に認められた。5. 明癌において, 病理組織学所見と予後とを比較すると, 癌病巣周囲のリンパ球を主体とした細胞浸潤の有無が最も予後と関係した。すなわち, 細胞浸潤がみられなかった8症例では, 癌が粘膜に限局していた1例を除けば, 7例中6例 (86%) が1カ月から1年7カ月で癌死したのに対し, 浸潤がみられた8症例では, 6例が無病生存, 1例が坦癌生存, 1例は2年7カ月で癌死であった。6. 一部明癌の中で, 転移, 再発を来した6症例中5例 (83%) は, 原発巣では明癌成分がわずかであったにもかかわらず, 化学療法, 放射線治療前の転移, 再発巣では, 明癌成分が著明に増加していた。以上, 子宮体部明癌の予後には, リンパ球を主体とした反応性細胞浸潤が関係している可能性が示され, その欠如は危険因子の一つになりうると考えられた。また, 一部明癌では, 転移, 再発巣において, 明癌成分が優位に増殖する傾向が明らかになり, 今後, 明癌のみならず, 一部明癌症例に対しても, 新たな積極的な治療が必要と考えられた。
著者
加藤 友康 清水 敬生 梅澤 聡 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1337-1342, 1994-12-01
被引用文献数
2

直腸に直接浸潤もしくは播種巣を形成した卵巣癌症例に対する, neoadjuvant 化学療法(NA化療)後の直腸合併切除の意義について検討した. 1988年7月から1992年12月までに当科でNA化療後に直腸合併切除を行ったIIIc期7例, IV期4例(漿液性腺癌10例, 類内膜腺癌1例)を対象とした. IIIc期例は試験開腹後にNA化療を開始した. IV期例ではPerformance status (PS)が悪いため試験開腹は施行せず, まず癌性胸腹水に対して免疫療法を施しPSの改善を図った後, ただちにNA化療を開始した. 化療のレジメンはCP (cyclophosphamide: 500mg/m^2, day 1; cisplatin: 10mg/m^2, day 1〜7)であり, 4〜6コース投与した. 効果はPartial Response 9例, Minor Response 1例, No Change 1例であった. NA化療後, 子宮・卵巣・直腸をen blocに摘出した. 人工肛門が造設されたのは計画的に骨盤内臓全摘術を行った1例のみであった. 上腹部臓器に転移巣が残存した5例は, 可及的に摘出した. 術後の残存腫瘍径は, 残存腫瘍なしが5例, 0.5cm未満が2例, 2cm未満が3例, 2cm以上が1例であった. 術後合併症例はみられず, 術後治療によるPSの改善が効を奏したと思われる. 11例の全生存期間(5例死亡)は平均26.8ヵ月であった. なお, 残存腫瘍径が0.5cm未満の症例7例(2例死亡)中, 2年未満の死亡例はなかった. 直腸合併切除及び播種巣の可及的切除により残存腫瘍径を0.5cm未満にすることが可能な症例では, NA化療後の直腸合併切除はQuality of Lifeを損ねることなく, 予後に大きなimpactを与えると期待できる.