著者
浅井 元朗 黒川 俊二 清水 矩宏 榎本 敬
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-10, 2007-03-30
被引用文献数
7

輸入穀物に由来する海外からの雑草種子の非意図的導入とその耕地への拡散が大きな問題となっている。1993〜95年にかけて鹿島港に入港したムギ類,ナタネ等冬作穀物中の混入雑草種子を調査した。21科92種が識別された。81種群,29検体を対象とした除歪対応分析による序列化の結果,アメリカ合衆国産,カナダ産,ヨーロッパ産(ドイツおよびフィンランド),オーストラリア産の調査検体がそれぞれ特徴的な混入種組成を有することが判明した。アブラナ類が最多の25検体から検出され,シロザが23,カラスムギが21,ソバカズラが20,エノコログサおよびタデ類が18,グンバイナズナが17検体から検出された。アブラナ類は5ケ国全ての検体に混入しており,北米,特にカナダ産検体への混入数が多かった。高緯度産(カナダ,ヨーロッパ)検体には日本の温暖地以西では夏生一年草である草種が混入していた。生産国の主要雑草種と検体中の混入草種とはおおむね一致した。日本でも近年ムギ作の難防除雑草となっているカラスムギ,ライグラス類は輸入ムギ類に大量に混入していること,また生産国における輪作作物の自生雑草化に由来すると考えられるアブラナ類が最も多量に混入していることを確認した。
著者
清水 矩宏 田島 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.151-157, 1974-11-25

エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)の休眠性の確立と種子の含水率の関係を明らかにするため,種子形成過程の各時期に種子を脱粒し,風乾状態におき,その風乾過程での含水率と発芽習性の変化を検討した。また,完熟後も母体に着粒した状態で経過する種子についても同様に検討した。結果の概要は次の通りである。1)種子形成過程の第3期のはじめにあたる開花後30日目の種子は,脱粒時は,含水率が60.7%であり,光発芽も20℃および25℃ともに同程度で,光発芽可能温度域は広かった。しかし,以後の風乾過程の経過につれて,高温部の発芽のみ顕著に低下し,発芽温度域の縮少がみられ,休眠性の確立が認められた。2)同時に,この風乾過程において,20℃下での発芽速度が風乾時間の経過とともに速くなった。3)さらに,脱粒後の風乾過程のいかなる時期においても,暗黒中では発芽が見られず,光反応性に変化はなかった。4)開花後日数を異にする種子の脱粒後風乾過程での発芽習性の変化を検討した結果,種子形成過程の第2期末以降に達している種子は,上記1)と全く同様の傾向を示したが,第2期にあたる種子では,含水率が低下するにもかかわらず脱粒時に見られた25℃下での高発芽率が風乾過程においても消失しなかった。5)完熟後も母体に着粒した状態で後熟過程を経過する種子は,質,量ともに脱粒する種子と差異はなく,また時間の経過とともに高温部での光発芽が発現し,増大することが認められた。6)18℃下での発芽速度は,完熟後の比較的早い時期において,その速度が徐々にはやくなり定常状態になることが判明した。7)完熟後母体付着状態で経過する種子を強制的に脱粒して風乾状態においても,含水率および発芽習性に何ら大きな変化はみられなかった。