著者
清澤 真琴 木内 信
出版者
群馬県蚕業試験場
巻号頁・発行日
no.7, pp.45-49, 2001 (Released:2011-03-05)

養蚕の現場では、「ごろつき」「不結繭蚕」と呼ばれる、吐糸営繭せず正常に蛹化しない涸体が見られることがある。このような現象は、体内に残留する絹タンパクとの関係が従来から指摘されているが、詳細は明らかでないため、吐糸を阻害して蛹化に及ぼす影響を調べた。実験は、熟蚕を上蔟し、吐糸中の任意の時間に繭から幼虫を取り出して、吐糸管を鋭利なピンセットで除去し、吐糸を止めた。その後、幼虫を繭に戻して様子を観察した。また、体液中エクジステロイド濃度の測定と、その一部について分画を行った。その結果、吐糸が60%以上ならば多少遅延するが正常に蛹化した。しかし20%以下の場合は、ほとんどの個体が幼虫態のまま致死した。このような個体を解剖したところ、翅や気管、蛹クチクラの形成が起こり、排出されなかった絹タンパクが絹糸腺を破って体腔内に滲出していた。エクジステロイド濃度は、対照よりピークの濃度が低く、しかも遅れて現れた。