著者
小鹿 勝利 清野 年
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.73-84, 1996
参考文献数
26
被引用文献数
3

エゾマツの資源造成は1900年代初めより取り組まれ,30年代から60年代半ばまでは人工造林もある程度実行されてきた。しかしその造林地は不成績地が多く,60年代後半以降は造林も極めて少ない。その結果既往のエゾマツ造林面積は3〜4万ha程度に過ぎず,天然更新技術も未確立である。エゾマツ造林の停滞の理由は苗木生産の困難さ,初期成長の遅さ,気象害・虫害等の多発等とされているが,苗木生産上の技術的問題は実質的には解決済みであり,天然林内の小面積補助造林地では被害発生も少なく,他樹種と大差ない成長を示している。エゾマツは環境条件の影響を受けやすい樹種であるが,樹種特性に対応した生育環境の造成や植栽方法の選択で成林は十分可能である。北海道の自然条件に適応し生態的に安定した森林造成や持続的な森林経営の実現のため,エゾマツ資源造成の積極的な取り組みが不可欠である。