- 著者
-
渕上 康幸
- 出版者
- 日本犯罪心理学会
- 雑誌
- 犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.21-34, 2010-08-25 (Released:2017-09-30)
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
-
2
ADHDから反抗挑戦性障害(ODD),さらに素行障害(CD)へ至るDBDマーチの経路の途中に,家族との関係性や共感性といった要因を媒介させた逐次的モデルが成り立つか否かを検討するため,DSMの診断基準項目やDavis (1983)の多次元共感測定尺度等を用いて,少年鑑別所入所者を対象とした横断的,回顧的な自己記入方式の質問紙調査を実施した。有効な回答を得られた1,842名(うち女子250名)について,男女別に構造方程式モデリングを行った結果,①ADHD傾向→ODD傾向→CD傾向といった因果関係の流れは大筋において支持された。②総じてADHD傾向が強いほど,放任や虐待といったネガティブな家族との関係性が認められた。ただし,ADHDの亜類型の違いにより,ネガティブな家族との関係性の有様は異なっていた(多動衝動→虐待,不注意→放任)。③放任や虐待はCD傾向を高め,非行初発年齢を引き下げるリスク因であった。④共感性の「視点取得」は非行初発年齢を引き上げる保護因であった。⑤男子では放任は「視点取得」を低下させるリスク因であった。⑥男子では不注意傾向を強く自認するほど,共感性の「視点取得」は低く,逆に「個人的苦悩」は高かった。