- 著者
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渡會 兼也
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-01
本研究は高校物理の実験にハイスピードカメラ(以下、HSカメラと略す)を利用し、生徒が『観察』と同時に『測定』を行う教材の開発を目的としている。CASIOのデジタルHSカメラは1秒間に最大1000コマの動画撮影が可能である。現象を撮影しておけば、ゆっくり・何度も観察できるだけでなく、コマ送りによる位置測定も可能となる。HSカメラによる位置測定は映像から直接データを取得できるため導入が容易であり、本研究が今後のICT普及に重要な役割を果たす可能性がある。本研究では生徒が実験でHSカメラを使うことを主眼に置き、その様子や実験精度を調べた。生徒実験のテーマは①「物体の自由落下による重力加速度の測定」と②「力学台車の衝突による運動量の保存」の2つを設定した。①については、記録タイマーを使った班(6班)とHSカメラを使った班(2班)との実験を比較した。結果、記録タイマーの班の重力加速度は平均が8.06m/s^2であるのに対し、HSカメラの班の平均は8.70m/s^2になった。これはHSカメラの場合はテープと記録タイマーの摩擦を考慮しなくてよいため、精度が向上したと考えられる。②については、すべての班(10班)でHSカメラを使い、衝突における運動量の保存を確認した。実験は10%以下の精度で運動量の保存を確認できた班もあれば、比較的大きな誤差(20%~30%)を出した班もあった(割合は半々)。これは実験の最初に解析方法や誤差評価について生徒に周知が不十分であったことが一因であると考えている。解析の手法やその周知は今後の課題である。生徒の感想には、本研究のねらい通り「測定が簡単にできる」「何度もくり返し観察と測定ができる」等が多く挙げられた。一方で、「4~5人の班ではカメラの液晶画面が小さい」「視差による誤差評価が難しい」などの意見もあった。今後、視差による誤差が無視できる条件の提示等(例えば、物体のサイズを小さくする)も考える必要がある。現在は生徒実験による反省を元に実験の手順等を学会誌にまとめている。