著者
伊東 明彦 人見 久城 南 伸昌 渡辺 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、中学生高校生を中心に彼らがどのような力概念を持っているのかを調査し、中学校や高校で行われている初歩の物理学の授業の問題点を洗い出すことができた。それらをまとめると次のようになる。1) 中学校1年生において行われている力の学習において、力とは何かを明確に定義すべきである。少なくとも、「力とは押したり引いたりすることである」、ということを生徒に理解させる必要がある。さらに、付け加えるなら、力とは物体の速さを変える働きである、ということもとらえさせたい。2) 中学生は日常生活で使っている力という語と、理科学習に置いて使われる力の区別ができていない。3) MIF的な力概念は現在でも広く中学生高校生に認められる。以上の所見から、言葉による説明だけでは生徒に力とは何かを十分納得させることは困難であるといえる。本研究ではこのような調査結果を受けて、物体に働く力を視覚的に表示できる教材「Fi-Cube」を開発した。Fi-Cubeを用いた授業実践において、これまで習得することが困難であると思われていた慣性の法則に関する理解か大きく促進され、同時にMIF的な力概念が払しょくされることが明らかとなった。Fi-Cubeを効果的に利用することによって、これまで様々な方策が講じられながら決定的な改善策が見いだせていなかった力概念の獲得に大きく一歩踏み出すことができるものと考えられる。