著者
渡辺 和希
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.3, pp.156-173, 2010-12-31

言語は呼気音と吸気音による発話が可能であるが、吸気音に関しては、ほとんど研究対象となっていない。そこで本研究では日本語における吸気音について音圧及び時間長の観点から音声分析を行った。その結果、直前発話との音圧差があまり見られず、聴取者に知覚されている吸気音が確認された。また、持続時間長の計測から、息継ぎと比較すると、音圧差のない吸気音は時間長が長いという点が明らかになった。発話箇所においては感動詞や笑いといった直後に吸気音が頻出していることから、吸気音が韻律的に機能を持っており、加えて吸気の有無によって印象が異なる点からも、発話的弁別機能があることが示唆された。