著者
崔 玉花
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.4, pp.29-41, 2011-12-31

本稿は同じ意味内容を表すと思われる日本語と中国語の動詞が結果キャンセル構文の成立において異なる文法性を示す現象を取り上げ、当該構文の容認度に影響する要因を英語との比較を通して考察する。まず、目的語の量が特定されているか否かは日英語の当該構文の容認度に影響する要因であることを示す。また、日本語では自動詞文の表す出来事の性質も当該構文の容認度に影響する要因であることを述べる。次に、中国語では日英語と異なり、目的語の定性と特定性が結果キャンセル構文の容認度に影響しないことを示し、当該構文の容認度に影響するのは動詞のアスペクト性であると論じる。
著者
崔 玉花 CUI Yuhua
出版者
Linguistic Circle, The University of Tsukuba
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
vol.4(通巻30), pp.29-41, 2011-12-31

本稿は同じ意味内容を表すと思われる日本語と中国語の動詞が結果キャンセル構文の成立において異なる文法性を示す現象を取り上げ、当該構文の容認度に影響する要因を英語との比較を通して考察する。まず、目的語の量が特定されているか否かは日英語の当該構文の容認度に影響する要因であることを示す。また、日本語では自動詞文の表す出来事の性質も当該構文の容認度に影響する要因であることを述べる。次に、中国語では日英語と異なり、目的語の定性と特定性が結果キャンセル構文の容認度に影響しないことを示し、当該構文の容認度に影響するのは動詞のアスペクト性であると論じる。
著者
部田 和美
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.2, pp.33-47, 2009-12-31

授受動詞「ヤル・クレル・モラウ」文において従来言われている「位置・所有権の移動」という意味特徴に疑問を呈し、現象の観察からより包括的な意味素性の抽出を試みた。本稿では主に「彼は私に勇気をくれた」のような、抽象的な事物を対象とした授受動詞文を中心に考察を行い、その検証を踏まえて「ヤル・クレル・モラウ」文の意味は(位置・所有権の)「移動」ではなく「変化」であることを導き出した。
著者
丸島 歩
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.第 2 号 (通巻 28 号 2009), pp.48-56, 2009-12-31

従来、日本語音声のテンポの速さを表す指標として、主に「一定時間におけるモーラ数」が用いられてきた。しかし、聴覚上のテンポはこの数値と一致するとは限らない。そこで、日本語母語話者を対象にした聴取実験を行った結果、速いと感じられる音声は全体的なピッチが高く、その変動も大きいという傾向が見られた。また、全体的な構造も観察したところ、ポーズを含んだ指標である「発話速度(Speech rate)」の方が発話部分のみの速度である「調音速度(Articulation rate)」よりも聴覚印象と相関があることが明らかになった。
著者
李 孝漌
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.第4号(通巻30号), pp.1-15, 2011-12-31

本研究は現話者の発話を途中で中断させる聞き手からの割り込み発話に焦点を当て、その特徴からなぜ割り込みが生じるのか、またその割り込みによって生じた発話順番システム上の問題がおきた場合、話参加者はどのように対処していくのかについて分析を行った。その結果、発話開始の表明が相手に伝わらなかったことや発話終結の予測が困難であること、聞き手の発話開始への強い意志が見られる場合に割り込みが起きた。このような割り込み発話は現話者の発話順番を侵害することとなるが、会話参加者全員あるいは現話者に発話開始をアピールすることで発話順番を再構築することが観察された。
著者
陳 雯 CHEN Wen
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.11, pp.20-45, 2018-12-21

Titone & Connine(1994b)によると、慣用句の認知処理においては様々な要因が影響を及ぼすため、慣用句の認知過程を解明するには慣用句選出の際に、それらの要因をできるだけ統一する必要がある。Titone & Connine(1994b)と Tabossi 他(2011)はそれぞれ英語慣用句とイタリア語慣用句を対象に、慣用句の親密度、構成性、予測性などの性質について調査を行い、慣用句の認知過程を研究する際の慣用句選出の基準となるデータを提供している。一方で、日本語慣用句を対象としたこのような研究は未だ見られない。本稿はTitone & Connine(1994b)や Tabossi 他(2011)を参考に、まず1140個の日本語動詞慣用句を対象に親密度調査を行った。次に、日本語母語話者の親密度判断に基づき、親密度が上位300の慣用句を対象に透明度調査と予測性調査を行った。最後に、親密度・透明度・予測性の相関関係について分析を行った。本稿の結果は、日本語慣用句を対象とする今後の実験研究のために、慣用句選出の際の参考となる親密度、透明度と予測性のデータを提供することができる。
著者
渡辺 和希
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.3, pp.156-173, 2010-12-31

言語は呼気音と吸気音による発話が可能であるが、吸気音に関しては、ほとんど研究対象となっていない。そこで本研究では日本語における吸気音について音圧及び時間長の観点から音声分析を行った。その結果、直前発話との音圧差があまり見られず、聴取者に知覚されている吸気音が確認された。また、持続時間長の計測から、息継ぎと比較すると、音圧差のない吸気音は時間長が長いという点が明らかになった。発話箇所においては感動詞や笑いといった直後に吸気音が頻出していることから、吸気音が韻律的に機能を持っており、加えて吸気の有無によって印象が異なる点からも、発話的弁別機能があることが示唆された。
著者
岡崎 敏雄
出版者
筑波大学一般・応用言語学研究室
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
no.第3号 (通巻29号), pp.1-17, 2010-12-31

海外年少者日本語教育のあり方について、第一に、その理念となる「意味の生態系の育成としての言語教育」の骨格である生態学的リテラシーの育成として、「世界人口67億のうち10億の人口が飢餓の下にあることをも明示的に捉えた構造的理解に至る世界の能動的認識」に基づく意味・「人間生態系と自然生態系の相互作用、相互交渉的性格をなす実践」に基づく意味・「生きるための意味、及び意志の形成の下における実存」に基づいて捉えられた事象の意味の、生態系の育成、第二に、その基礎となる言語生態学と言語教育の関係、及び第三に、海外年少者日本語習得の習得論上の基盤をなす「言語生態学における言語習得の捉え方」について論ずる。