著者
渡辺 衆介
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.42-49, 1986-09-10 (Released:2017-08-01)

『今昔物語集』中の説話に、鬼など霊的なものの出現する方向として「後(うしろ)の方(かた)」という言葉がたびたび出てくる。本稿はこの「後の方」が寺院の後戸(うしろど)に祀られた神秘にして強力な霊格「後戸の神」に関連すると説く。そして、高取正男・服部幸雄両氏の研究を補う形で、後戸の神の多様な側面を解析する。後戸と戌亥信仰との関係、祖霊・家霊信仰との関係、源三位頼政と後戸とのつながり等々である。