著者
渡邉 寛康
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.170-182, 2005-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
30

加齢により唾液分泌量が減少することは多くの研究者により報告されており、特に女性において、性ホルモンとの関係が示唆されているが、詳細は不明である。卵巣ホルモンはアポトーシスにより唾液腺細胞数を調節すると仮説をたて、まずラット耳下腺においてアポトーシスの変化を検討した。さらに唾液腺由来の培養細胞を性ホルモン存在下にアポトーシスを誘導しその変化を検討した。造腫瘍性ヒト唾液腺介在部導管上皮細胞 (HSG細胞) を用い、24時間INF-γ存在下に培養後、坑FAS抗体およびエストロゲン、プロゲステロンを添加培養し、実験群を作製した。これらを位相差顕微鏡での経時的観察、アポトーシスによる細胞変化の電子顕微鏡観察および43時間経過後フローサイトメトリーにて、TUNEL法および活性型Caspase-3の測定によりアポトーシス誘導後の変化を分析した。エストロゲン添加群ではアポトーシスは抑制され、プロゲステロン添加群ではアポトーシスは充進した。卵巣ホルモンは耳下腺でのアポトーシス調節因子であり、エストロゲン投与が耳下腺でのホルモン欠乏によるアポトーシスを抑制し、閉経期以降増加する口内乾燥を軽減する可能性が示唆された。