著者
渡邉 智美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

【目的】<br> 高等学校「家庭」の科目、家庭基礎の食事と健康では、「健康で安全な食生活を営むために必要な基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、生涯を見通した食生活を営むことができるようにする」ことが求められている。家庭基礎の食事と健康で学んだことを生活のなかで実践できるようにするためには、生徒の実態に応じた題材を取り上げ、調理実習を通して指導することが必要である。<br> 本研究では、調理経験の少ないと思われる生徒でも調理ができ、課題のねらいが理解できるように教材の改善を試みた。<br>【方法】<br>(1)平成24年度に、県立高等学校1年生70名を対象として、夏バテを防ぐための1食分の献立作成と調理・レポートという夏休みの課題を与えた。さらに教員が作成した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。このとき配布した教材について、作り方の理解度に関するアンケートを実施した。アンケート結果をもとに、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を改善した。<br>(2)平成25年度に、同校1年生66名を対象として、改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を使用した夏休みの課題を与えた。課題後に調理方法、課題のねらい(野菜を多く摂ることができる調理方法を知る)に対する理解度や調理の意欲についてアンケートを実施した。<br>【結果】<br> 平成24年度の夏休みの課題で、生徒が作成した献立の約60%は、野菜の使用量が食品群別摂取量のめやすの1/3を充たしていなかった。そこで、野菜を多く摂ることができる調理方法を学習させるために、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。レシピは根菜のお味噌汁とスープカレーである。根菜のお味噌汁には人参と大根などを使用。スープカレーにはキャベツ、玉ねぎ、プチトマトとウィンナーを使用した。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分かったという回答は82.5%、分からなかったという回答は17.5%であった(回答者63名)。材料の切り方が分からなかったという回答をした生徒が指摘した4種の切り方について、教材に図を加えた。また加熱時間を具体的に示し、さらにカラー刷りにした。<br> 平成25年度の夏休みの課題で、生徒は改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」2つから1つを選択し、調理を行った。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分からなかったという回答は1.5%であった。前年度の教材を改善したことによって、切り方が理解しやすくなったと考えられる。またレシピの選択では、根菜のお味噌汁が30.3%(20名)、スープカレーが69.7%(46名)であった。レシピを選択した理由(複数回答あり)は「美味しそうだから」が32名と最も多く、次いで「簡単そうだから」が14名であった。このように生徒が美味しそうと思うような料理を題材とすることにより、生徒に調理の意欲を持たせることができる可能性があると考えられる。また、選択しなかったレシピも調理しようと思った生徒は54.5%であった。加熱調理をすることにより、野菜を多く摂取できることを理解した生徒は45.5%にとどまったため、今後さらに教材を改善する必要があると思われる。<br>