著者
柿原 新 鳴重 寿人 佐野 裕規 田代 久宗 大谷 研文 柳澤 郁成 渡邉 雅治 山中 典子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.e45-e50, 2023 (Released:2023-03-29)
参考文献数
21

2019年10月,肉用牛飼養施設において,黒毛和種繁殖雌牛10頭が元気消失,食欲低下及び下痢等の症状を呈し,その後約3週間で9頭が死亡した.血清生化学検査でBUNとCreが高度に上昇,腎臓の病理組織学的検査を実施した5頭全頭で急性尿細管壊死が認められた.放牧場の糞便及び死亡牛の第一胃内容物中からクヌギのドングリの果皮が見つかった.比色法により定量したところ,クヌギドングリには6.08%(乾燥重量%)と高濃度の総ポリフェノールが含まれていた.また,第一胃内容の検査を実施した死亡牛全4頭からもポリフェノールが検出された.以上の結果から,本事例をドングリ中毒の集団発生と診断した.牧草の少ない時期に,大型台風により大量のドングリが放牧地に落下しており,放牧牛が短期間に大量に摂取したことが,発生要因と推測された.