著者
片岡 容子 種村 正 佐々木 伸子 由井 恵美 渡邊 伸吾 堤 由美子
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.370-377, 2019-06-01 (Released:2019-06-12)
参考文献数
5

目的:心エコーで算出する肺体血流比(Qp/Qs)に誤差が生じるのは,右室流出路形状が楕円形であることが原因の一つであると考えられる.本研究の目的はCTで右室流出路形状を解析すること,CTと心エコーで右室流出路断面積を比較し,その差が生じる原因について検討することである.対象と方法:心エコーとCTを同時期に施行した右室拡大がない67例(男性53例,女性14例,平均年齢58±26歳)を対象とした.CTで得られたMPR画像から,右室流出路の長径,短径,断面積を計測した.心エコーでは右室流出路長軸断面で計測した右室流出路径を直径とする面積を下位肋間断面積とし,探触子を1肋間上方に移動させて計測した面積を上位肋間断面積とした.CTから得られた値から右室流出路形状を解析し,各断面積を比較した.結果と考察:右室流出路形状は全症例が心臓の前後方向につぶれた横長の楕円形を呈していたことから,右室流出路形状そのものがQp/Qsの誤差要因の一つであることが明らかになった.CTの面積は6.6±1.8 cm2,心エコーで計測した下位肋間断面積は5.3±1.2 cm2(p<0.001),上位肋間断面積は6.5±1.2 cm2(ns)であったことから,右室流出路径は上位肋間で計測した方が良いと考えられた.結論:右室流出路形状が横長の症例においては,心エコーによる右室流出路径計測は上位肋間で行うとCTで計測した右室流出路断面積に近い値が得られる.右室流出路形状が楕円形であること自体が肺体血流比の誤差要因の一つであり,心エコーで計測している部位が症例によって一定ではないためにバラツキが生じるものと考えられた.