著者
氏家 治 田中 るみ 渡邊 和徳
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.315-328, 1999-09-05
参考文献数
41
被引用文献数
7 8

毘沙門岳火山は単斜輝石&mdash;斜方輝石安山岩&sim;デイサイトと比較的少量の角閃石安山岩からなる。Sr/Y>40, SiO<sub>2</sub>&asymp;63%, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>&asymp;18%の組成を有するこれらの岩石はアダカイト質であり,近隣の火山の岩石と比べてK<sub>2</sub>O, Rb等の液相濃集成分に乏しく,基本的には,広域的安山岩マグマと当火山に固有の珪長質マグマの混合物と考えられる。珪長質端成分マグマは,Mgに富む斜方輝石(Mg/(Mg+Fe)&asymp;0.80),単斜輝石(Mg/(Mg+Fe)&asymp;0.82)恐らくマントル由来の橄欖石(Fo&asymp;90)を特徴的に含み,その化学組成(SiO<sub>2</sub>>65%, Na<sub>2</sub>O&le;3.2%, K<sub>2</sub>O&le;1.2%, Rb&le;20 ppm, Y<10 ppm, Nb&le;6 ppm,全FeO/MgO&le;1.6,およびSr/Y>60)はアダカイトの特徴をより明瞭に示す。断定するには未だデータ不足だが,この端成分アダカイトマグマは沈み込みつつあるフィリピン海プレート海洋地殻の部分溶融作用で生じた可能性が高い。