著者
今田 直樹 河内 明宏 北森 伴人 大嶺 卓司 田中 善之 渡邊 泱
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1114-1119, 1996-09-20
参考文献数
10

(背景と目的) 膀胱内圧脳波終夜同時測定に基づいた体系的治療を施行し, 2年間経過観察が可能であった夜尿症患者の長期治療成績を検討した.<br>(対象と方法) 対象は1990年1月から1991年12月までに, 膀胱内圧脳波終夜同時測定を施行した213例で, その病型分類は1型夜尿症136例 (64%), IIa型夜尿症20例 (9%), IIb型夜尿症57例 (27%) であった.<br>(結果) 2年後の体系的治療の治療成績は夜尿症患者全体で, 治癒44%, 有効38%, 無効18%であった. 2年後のI型夜尿症に対する治療成績は, 治癒52%, 有効37%, 無効11%であり, IIa型夜尿症に対する治療成績は, 治癒40%, 有効45%, 無効15%であり, IIb型夜尿症に対する治療成績は, 治癒26%, 有効39%, 無効35%であった. 有効群と無効群を比較すると, 有効群が有意に年齢が高かった. I型夜尿症において, 無効群に有意に昼間遺尿を有する症例が多かった. 夜尿回数と尿意覚醒の有無は両群で有意差を認めなかった.<br>(結論) 夜尿症分類ではI型夜尿症が最も軽症で, IIb型夜尿症が最も重症であると考えられた. 病型移行したものも有効に含めれば, 2年間の体系的治療に全く反応がみられない症例は全体の約1割であり, この1割が難治性の夜尿症と考えられた.