著者
渡邊 継男 柴田 健一郎
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

汚染細胞から高率に検出されるマイコプラズマ(Mycoplasma oraleとMycoplasma fermentans)の増殖能に対する界面活性剤、trypsin、MnCl_2、加熱ならびに培養温度の影響を調べた結果を参考にして、人為的にM.oraleで汚染したHeLa細胞からのマイコプラズマの除去を以下の通り試みた。1.Triton X-100処理:汚染細胞5x10^4個を0.01%Triton X-100添加DME medium5mlに浮遊させ、37℃で3、6、9分間強く振盪しながらincubateした。遠心(1,000rpm、5分間)で細胞を沈澱させ、10%FCS添加DME medium(FCS-DME)10mlで3回、毎回遠心管をかえて、洗浄した後に、FCS-DME5mlに浮遊させ、flask(25cm^2)で培養した。confluent layerとなったところで、細胞を収穫し、マイコプラズマ増殖用培地に浮遊させ、培養し、マイコプラズマの検出を試みた。2.trypsin処理:汚染細胞5x10^4個を0.25%trypsin(Gibco)5mlに浮遊させ、37℃で30分間、Triton処理と同様に、incubateし、以下、同様の処理を行った。3.MnCl_2添加培地での培養:0.5、1.0あるいは2.0mM MnCl_2添加FCS-DME5mlに汚染細胞5x10^4個を浮遊させ、flaskで培養し、confluent layerとなったところで、細胞を収穫して、以下、Triton処理の場合と同様の処理を行った。4.50℃での加熱:汚染細胞5x10^4個を5mlのFCS-DMEに浮遊させ、50℃で1、2、3分間加熱して、遠心で細胞を収穫し、以下、Triton処理の場合と同様に処理した。5.40℃での培養:汚染細胞5x10^4個を5mlのFCS-DMEに浮遊させ、40℃で強く振盪しながらincubateし、48、72、そして96時間後に、細胞を集め、以下、Tritonの場合と同様に処理した。その結果、40℃での培養で、比較的高い成功率でマイコプラズマを除去することが出来たので、以下の方法を確立した。1.汚染細胞5x10^4個をFCS-DME5mlに浮遊させ、40℃で強く振盪しながらincubateする。2.24時間後に、細胞を集め、10mlのFCS-DMEで、3回、毎回遠心管を変えて、洗浄する。3.step1と2をさらに3回以上繰り返す。以上の実験と同時に、M.fermentansの諸性状について検索していたところ、このマイコプラズマはprotein tyrosine phosphatase活性を持つことが明らかにされた。