著者
渡部 泰守 荒瀬 誠治 瀬上 三貫 重見 文雄 武田 克之
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.439-444, 1988-06-01 (Released:2012-03-07)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

香川県善通寺市のニンニク栽培農家を対象としてニンニク皮膚炎アンケート調査を行つた。有効解答は389戸, 男子364名, 女子416名, 計780名から得られた。このうちニンニク皮膚炎経験者は400名(51.3%)で男女差および年令による陽性率の差はおおむねなかつた。皮膚炎発症までの平均期間は栽培開始後2.45年, 作業開始後4.03日で毎年かぶれると答えた者が33%あつた。皮膚炎発症部位は手(89%), 腕(15%), 顔(12%), 首(4%), 全身(3%)などで, 症状は皮膚がむける(70%), 赤くなる(48%), 腫れる(16%), ぶつぶつ(13%), 水ぶくれ(8%), 皮膚が厚く硬くなる(5%), また自覚症状としては痛み(57%), 痒み(42%)などであつた。栽培方法ではニンニクの液汁に触れる機会の多い早出しニンニク栽培群のほうが普通ニンニクのみ栽培群よりも陽性率が高かつた。また手袋で手を保護してもなお皮膚炎を生じると解答した男子3名, 女子10名, 計13名と対照21名を対象としてpatch testを行つたところニンニク皮膚炎陽性群のうち1名のみに陽性反応が得られた。したがつてニンニク栽培従事者にみられるニンニク皮膚炎の大部分は1次刺激性接触皮膚炎であると思われる。しかし, 対照群のうち2例にpatch testによる感作が成立し, ニンニクは強い1次刺激性ばかりでなく感作能をもあわせもつていると思われた。