著者
溝畑 朗 伊藤 憲男 楠谷 義和
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.77-102, 2000-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21
被引用文献数
8

自動車排気による汚染が特に顕著な東京都内の道路沿道で大気中の粒子状物質 (PM) を測定し, 自動車による影響を調べた。調査時期は1997年12月 (冬季) と翌年6月 (夏季) であり, 期間はそれぞれほぼ2週間であった。冬季には道路沿道の2地点で, また夏季には道路沿道1地点と対照とする1地点で粒径別に採取したPM試料に機器的中性子放射化分析法, イオンクロマトグラフ法, 熱分離炭素分析法を適用して, その化学組成を詳細に分析した。PMおよびその化学成分の粒径別濃度測定結果に数値解析を施し, それぞれの粒径分布を導出した。PMの粒径分布はいずれの測定でも粒径1~2μmが谷となる双峰分布パターンであったが, 化学成分では, 主にその成分を含む粒子の生成由来や発生源を反映して, それぞれ特徴的であった。自動車走行によるPMへの寄与は, 主にディーゼル車排気粒子によるものであった。その主成分である元素状炭素の粒径分布は著しく微小粒径に偏よっていて, ほぼ80%が微小粒子に含まれた。また, 道路粉塵の生成・再飛散やタイヤやブレーキ摩耗塵の発生によって, Alなどの土壌性粒子の指標とされる元素やCu, As, Mo, Sb, Ba, Hfなどを高濃度に含む粗大粒子が顕著であった。水可溶性イオンは炭素成分に次いで多い成分であり, 特に冬季の微小粒子中で大きな割合を占めた。特に, NO3-の前駆物質であるNOxの発生源として自動車排気が大きく影響していると考えられるが, ディーゼル排気粒子によるSO42-濃度への寄与は道路沿道でも小さかった。