著者
滝口 涼子 伊藤 冨士江
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.55-68, 2010-02-28

わが国では犯罪被害者施策が急速に進んでいるが,その背景には特に犯罪被害者遺族を中心とした被害者運動があった.しかし被害者遺族に関する調査研究の動向をみると,被害者運動やソーシャルアクションに焦点をあてた研究は少ない.本研究では,被害者遺族の体験,特に被害者運動への関わりを取り上げ,事件後,遺族としてどのようなことを経験し,いかに被害者運動に関わり,なにを得たのかを分析することを目的とした.被害者当事者団体(「被害者の会」)の会員である遺族11人にインタビューを行い,「被害者の会」での運動参加・継続過程に関するナラティブを質的に分析した.この結果,「事件にまつわる思い」と,「遺族が運動に参加し始め,活動を続けていく過程」の2つのカテゴリーが見いだされた.さらに,エンパワメント・アプローチの視点から,パワーの欠如状態,エンパワメントの構成要素,パワーの生起するレベルの3点に関して考察を加えた.