著者
滝口 雅文
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
23

HIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)は,HIVの増殖している細胞を殺すことで体内でのHIVの増殖を抑制するが,これらのCTLの認識を阻害する変異を持ったHIV(逃避変異HIV)が出現すると,体内ではこれらの変異体が優位になると推定されていた.最近の世界9か所のコホートでの約2800人のHIV-1感染者を解析した最近の研究で,CTLからの逃避変異HIVが蓄積してきていることを明らかにした.このことは,HLAクラスIとの結合やCTLからの認識を傷害する変異を持ったHIVが選択され,HLAクラスIに適合するようにHINは進化していることを意味している.このような免疫から逃避するHIVの進化は,ワクチンの開発に大きな課題を提示した.