著者
滝本 知彦 武田 昭二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.431-442, 1991-07-25
被引用文献数
11

抽出法による細胞毒性試験において, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性に与える影響について検討した.すなわち, 種々な濃度に調整した8種類の金属塩をマウス結合織由来のL-929細胞に1日, 3日および5日間作用させ, 金属イオン濃度と細胞生存率の関係についてしらべた.その結果, 初期細胞数が多いほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は高くなった.また, 金属イオンの作用時間が長くなるほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は低くなった.ニュートラルレッド法, MTT法, クリスタルバイオレット法およびタンパク定量法の4種類の判定法を比較すると, 金属イオンの種類によって各判定法間で細胞阻止濃度にわずかな差が認められた.とくに, BeイオンとCuイオンにおいて, MTT法と他の判定法との間における差が顕著であった.20%と80%の細胞阻止濃度から求めた濃度-反応曲線の傾きは, 金属イオンの種類, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法によって異なっていた.以上の実験結果から, 抽出法による細胞毒性試験において初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性評価に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり, 今後, 歯科材料の細胞毒性試験実施に当たって有益な示唆を与えるものと思われる.