著者
田中 道弘 滝沢 真智子 Michihiro TANAKA Machiko TAKIZAWA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.341-346, 2010-12-01

人間は、過去、現在、未来という時間軸とその広がりの中で、自己を捉えることが可能である。さらに、過去や現在、未来をいかに捉えるかによって、自己評価や将来展望などが変化する。これまでの時間的展望に関する研究では、主に現在から未来に視点を向けた研究が中心であり、過去に対する視点の研究が少なかった。その一方で、過去のとらえ方と精神的健康との関係では、主に自己受容に関する研究から行われてきた。しかし、人間は、自分の過去についてすべて自己受容できなくとも、人は前向きに生きることができるのではないだろうか。また、過去の自分の至らない点を振り返りながら、現在の自分とを比較することで、自己成長を認識することもあるだろう。そこで、本研究では、過去に対する自己肯定感尺度の開発を試みることにした。その結果、過去に対する自己肯定感尺度は、主成分分析から1因子構造にまとまり、α=.829 と高い信頼性が確認された。時間的展望体験尺度との関係からは、基準関連妥当性も確認され、概ね実用可能であると判断された。