著者
田中 道弘 滝沢 真智子 Michihiro TANAKA Machiko TAKIZAWA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.341-346, 2010-12-01

人間は、過去、現在、未来という時間軸とその広がりの中で、自己を捉えることが可能である。さらに、過去や現在、未来をいかに捉えるかによって、自己評価や将来展望などが変化する。これまでの時間的展望に関する研究では、主に現在から未来に視点を向けた研究が中心であり、過去に対する視点の研究が少なかった。その一方で、過去のとらえ方と精神的健康との関係では、主に自己受容に関する研究から行われてきた。しかし、人間は、自分の過去についてすべて自己受容できなくとも、人は前向きに生きることができるのではないだろうか。また、過去の自分の至らない点を振り返りながら、現在の自分とを比較することで、自己成長を認識することもあるだろう。そこで、本研究では、過去に対する自己肯定感尺度の開発を試みることにした。その結果、過去に対する自己肯定感尺度は、主成分分析から1因子構造にまとまり、α=.829 と高い信頼性が確認された。時間的展望体験尺度との関係からは、基準関連妥当性も確認され、概ね実用可能であると判断された。
著者
田中 道弘
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-181, 2005-12

本研究では、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連について検討した。従来の研究では、インターネットの利用時間による問題が重要視されてきたが、本研究では、インターネット上でのモラル(インターネット・モラル尺度)という新たな基準とを合わせて検討を行った。精神的健康の基準としては、病理的傾向に基づく自己愛(病理的自己愛)、時間的展望、自己肯定感の3つの尺度を用いた。 対象は、茨城県内の大学3校(国立大学2校、私立大学1校)と埼玉県内の大学1校(私立大学)の合計4校の学生、405名に調査協力を依頼し、有効回答397票を得た(男性240名、女性157名)。年齢範囲は18歳から28歳までであり、平均年齢は、20.1歳(男性20.3歳、女性19.9歳)であった。 本研究の結果、インターネットの利用時間が121分を超える大学生群では、他群と比べ"時間的展望"と"自己肯定感"の得点が概ね低いという結果が得られたものの、病理的自己愛について有意差は確認されなかった。一方、インターネット・モラルの低い大学生群は、高群よりも時間的展望、及び自己肯定感の各平均得点が低く、病理的自己愛の平均得点が高いことが示された。 これらのことから、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連を検討する際に、インターネット・モラルは精神的健康と深く関わりがあるとともに、インターネット利用者の精神的健康に関する一つの基準となりうることが示唆された。
著者
小島 弥生 田中 道弘 Yayoi KOJIMA Michihiro TANAKA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.113-125, 2020-12-01

先行研究(田中・小島, 2019)に引き続き、諦観傾向尺度の構成概念妥当性を検討することが本研究の目的であった。諦観傾向の強さは自己肯定感との間に負の相関関係があると想定した。また、諦観傾向と自己愛との間の相関、諦観傾向と友人関係への態度(深い友人関係を望むか否か、広い友人関係を望むか否か)との間の相関についても探索的に検討した。予測どおり諦観傾向と自己肯定感の間には強い負の相関が示されたほか、諦観傾向と自己愛の下位概念である主導性との間に弱い負の相関がみられた。また、諦観傾向と友人関係への態度の間には性差がみられ、男性は諦観傾向が強いほど狭い友人関係を志向するのに対し、女性は諦観傾向が強いほど浅い友人関係を志向するという結果が得られた。
著者
田中 道弘 Michihiro TANAKA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-181, 2005-12-01

本研究では、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連について検討した。従来の研究では、インターネットの利用時間による問題が重要視されてきたが、本研究では、インターネット上でのモラル(インターネット・モラル尺度)という新たな基準とを合わせて検討を行った。精神的健康の基準としては、病理的傾向に基づく自己愛(病理的自己愛)、時間的展望、自己肯定感の3つの尺度を用いた。 対象は、茨城県内の大学3校(国立大学2校、私立大学1校)と埼玉県内の大学1校(私立大学)の合計4校の学生、405名に調査協力を依頼し、有効回答397票を得た(男性240名、女性157名)。年齢範囲は18歳から28歳までであり、平均年齢は、20.1歳(男性20.3歳、女性19.9歳)であった。 本研究の結果、インターネットの利用時間が121分を超える大学生群では、他群と比べ"時間的展望"と"自己肯定感"の得点が概ね低いという結果が得られたものの、病理的自己愛について有意差は確認されなかった。一方、インターネット・モラルの低い大学生群は、高群よりも時間的展望、及び自己肯定感の各平均得点が低く、病理的自己愛の平均得点が高いことが示された。 これらのことから、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連を検討する際に、インターネット・モラルは精神的健康と深く関わりがあるとともに、インターネット利用者の精神的健康に関する一つの基準となりうることが示唆された。