著者
澤井 喜邦 加藤 大也 釜谷 直人 片田 直幸 伊藤 光泰
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.938-942, 2013-12-30 (Released:2014-01-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2

症例はインスリン自己免疫症候群(IAS)と診断された73歳の女性.71歳時に進行直腸癌に対し低位前方切除術を受けた.術後5-FUなどを用いた化学療法を施行した.73歳時に後腹膜再発による回腸浸潤を認め後腹膜転移巣切除と回腸切除を施行した.術後7日目に低血糖昏睡を生じその後毎日低血糖を生じたため術後17日に当科入院となった.低血糖発作時の血糖値は45 mg/dlで血清インスリン305 μIU/ml,インスリン抗体が陽性でScatchard解析の結果k1=0.1135×108 l/mol, b1=1.7×10-8 mol/lと低親和性高結合量の抗体性状を有することからIASと診断した.IgEインスリン抗体も陽性だった.HLA-DRB1*0406, *04051とIAS感受性と抵抗性アリルを併せ持つ稀な型を認めた.低血糖は補食で対応でき約半年で自然軽快した.直腸癌の後腹膜再発・回腸浸潤の手術後にHLA-DRB1*0406, B1*04051に発症したIASは興味深い.本例のIASは回腸手術が誘因の免疫寛容消失が関与した可能性が考えられた.
著者
矢神 真奈美 加藤 大也 林 安津美 脇阪 涼子 小林 憲司 鷲野 香織 山本 絢子 立石 早祐美 澤井 喜邦 稲垣 一道 金山 均 片田 直幸 伊藤 光泰
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.430-435, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
18

2型糖尿病患者(60名)に対して食品交換表にて指導を24週間介入後,さらにカーボカウント基礎編を上乗せする指導(カーボカウント上乗せ群;30名:男性/女性=14/16)と,食品交換表による指導(食品交換表継続群;30名:男性/女性=16/14)に無作為に振り分け24週間介入し,各群介入前後で糖代謝,脂質代謝,BMI及びメンタル面の比較検討を行った.介入後両群共にHbA1c及びLDL-Cは有意な改善が認められた,さらにカーボカウント上乗せ群では,HDL-C,BMIの有意な改善が認められた.両群間の変化率の比較では,カーボカウント上乗せ群は食品交換表継続群に比べてHbA1c(-13.0±12.8vs-3.8±15.5%;p=0.014)及びHDL-C(12.7±19.5vs 3.0±15.1%;p=0.038)の有意な改善が認められた.メンタル面の評価では,カーボカウント上乗せ群では有意に食事の満足度が高く,食事療法継続の苦痛感が少ないことが認められた.故にカーボカウント上乗せ群では食品交換表継続群に比べてより糖代謝を改善し,さらに患者QOLを高める可能性が示唆された.