著者
末瀬 一彦 橘高 又八郎 辻 功 澤村 直明
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.45-55, 2019 (Released:2019-01-26)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

目的:平成26年4月にCAD/CAM冠が先進医療として医療保険に導入され,平成28年9月には全国の歯科診療所の59.0%が施設基準の届け出を提出するようになった.そこで,CAD/CAM冠を成功させ,大臼歯や前歯部への適用拡大を図る目的で,CAD/CAM冠の使用状況ならびに予後について広範囲の調査を行った.方法:全国の歯科診療所を対象にCAD/CAM冠に対するアンケート調査を実施した.調査の回収にあたっては歯科技工所の協力を得て,全国約2,000カ所の歯科診療所を対象に調査を実施した.調査内容は,CAD/CAM冠適用の実態,CAD/CAM冠の脱離と破折,CAD/CAM冠の将来展望,患者評価などである.結果:CAD/CAM冠の脱離率は8.0%で,前回調査よりわずかに減少し,脱離までの期間は,装着後2週間以内,また破折率は4.3%を占め,前回調査よりわずかに増加した.破折までの期間は2週間以降1カ月以内が多かった.装着前の前処理としてプライマー処理は88.5%の歯科医師が行っていたが,サンドブラスト処理は38.9%であった.また脱離に関しては使用したレジンブロックおよび接着性レジンセメントの種類において有意差は認められなかった.さらに患者評価は極めて高く,98.9%が満足している回答であった.結論:医療保険におけるCAD/CAM冠の適用頻度は増加しているが,今後さらに大臼歯部や前歯部への適用拡大においては材料強度,色調再現性を高めるとともに,脱離や破折に対する配慮は極めて重要である.