著者
澤田 元 尾野 道男
出版者
横浜市立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の特徴である、臓器を皮下に移植することにより、生体内で再生現象を起こさせた場合の変化について調べ、いくつかの重要な知見を得た。本年度に新たにわかったことを以下に記す。(1)気管の上皮細胞は移動に際し、重層扁平化(扁平上皮化生)したが、電子顕微鏡レベルでの観察では、移動先端の細胞は上層の扁平な細胞層と、下層の立方状の細胞層が区別できた。最上層の細胞の上面には徴絨毛が見られるなど、細胞極性は一部維持されていた。細胞間隙は開いており、そこに多数のヒダを出して隣の細胞と結合している。接触面にはデスモソームが見られる。移動先端では不規則な形と大きさのBleb状の構造が見られ、移動にとって重要な役割をしていることが推察された。この構造は中に差相棒ない小器官をほとんど持たずアクチンの断面と思われる点状構造のみが見られた。(2)気管は皮下に空間を作り、上皮の断端が宙に浮くように移植しても上皮間に薄い膜が張って、その内側に上皮が移動、再生した。この膜は上皮が移動した先端部を境にして、フィブリンが主体の中心部分と各種コラーゲンが主体の周辺部に区別される。そこで人為的にコラーゲン膜やフィブリン膜を作成して、この膜上で気管の上皮再生を促したところ、コラーゲン膜では良好な再生が見られたが、フィブリン膜には細胞は接着できなかった。なお、細胞接着タンパクのフィブロネクチンは細胞外マトリックス全体に幅広く分布していた。