著者
田原 鈴子 澤田 勝志
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.629-633, 2015 (Released:2016-05-30)

岡山県では,2009年1月~2014年3月の間,牛ボツリヌス症(D型)が11農場で発生した。糞便からボツリヌス毒素が検出された11農場から採取した環境材料(飼料,水,牛舎スワブ,野生動物糞便)のうち,野生動物糞便からの検出率が8農場中4農場と最も高率であった。11農場中2農場で,D/Cモザイク型のC. botulinumが分離され,パルスフィールドゲル電気泳動解析の結果,これらの菌株は同一の泳動パターンを示した。発生農場のうち,9戸が直径20kmの範囲内に位置し,菌株が分離された2戸の農場は,疫学的関連がなかった。ボツリヌスワクチン導入農場において,ワクチン未接種牛で本症が発生し,環境材料から高率にボツリヌス毒素が検出された。以上のことから,C. botulinumの伝播には野生動物が関与していることが示唆された。ワクチン接種は本症の発症抑制に効果的であるが,C. botulinumの排菌は抑制しない。C. botulinumの拡散防止のためには,農場内の清掃及び消毒の徹底と,野生動物の侵入防止措置などの清浄化対策が最も重要である。