著者
蒲生 恒一郎 小川 孝 衛藤 真理子
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.557-560, 2008 (Released:2011-01-19)

平成15年度から17年度に提出された動物用狂犬病ワクチンの副作用報告をもとに、その傾向、特徴等を分析した結果、狂犬病ワクチンは市販の犬用混合ワクチンよりも副作用発現率が有意に低く、より安全なワクチンであることが確認された。また、副作用の発現は1歳未満と10歳以上12歳以下に副作用が多いこと、接種当日に副作用が発現しやすいこと、特に重篤な副作用は6時間以内に発現しやすいことが明らかになった。さらに、アナフィラキシー症状は副作用報告件数の約半数を占めることが示された。これらのことから、使用説明書の記載のとおり、ワクチン注射後当日は注意深く観察することの重要性が確認された。
著者
板橋 知子 佐々木 淳 倉持 好 御領 政信
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.549-553, 2011-07 (Released:2012-12-03)

オカメインコにおける甚急性型オウム嘴羽病(PBFD)の作出を目的として、PBFDウイルス(PBFDV)接種実験を行った.PBFDV抗体フリーのオカメインコの幼雛(1~7日齢)5羽にウイルス乳剤を筋肉内接種し、接積後1、3、4、6、10週に剖検、全身諸臓器の病理組織学的検索を行った.また、剖検時に採取した組織を用いて、PCR法による病因学的検索を行った.接種後3週以降の症例でPBFDVの感染が成立していることが確認されたが、発症時期や病理組織学的検索結果は甚急性型PBFDよりも急性型PBFDの特徴と一致した.これらのことから、孵化間もないオカメインコ幼雛がPBFDVに感染しても急性型PBFDを発症し、甚急性型の実験的再現は難しいことが明らかになった.
著者
鍵山 直子
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.395-398, 2010-06-20
参考文献数
4

2005年の「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法)改正を受け、法を施行する環境省は「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(2006年)を定めた。動物を科学上の利用に供する行為は一般に動物実験とよばれ、動物実験にはそのために作出された実験動物がおもに利用されている。ところで、動物実験は動物愛護管理法の基本原則「みだりに動物を殺し、傷つけ、苦しめてはならない」に抵触する行為であろうか。正当な理由があるかどうかが鍵になるが、それは動物の範疇によって異なるという考え方が根底にある。
著者
一二三 達郎 池田 加江 江藤 良樹 井河 和仁 西村 耕一 小川 卓司 川口 博明 三好 宣彰
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.253-257, 2015 (Released:2015-07-06)

2012年7月から12月の6カ月間に福岡県のと畜場に搬入された馬610頭中53頭において肝臓に灰白色硬結節が認められた。硬結節の病理組織学的及び遺伝子検査を実施し,多包虫の感染状況を調査した。これらの検査結果から,39頭が多包虫症と診断された(感染率6.4%)。過去に報告されている軽種馬だけでなく,ポニー種,日本輓系種,北海道和種などのさまざまな品種で多包虫感染が確認された。疫学調査では,4頭が多包虫症の有病地である北海道での飼養歴が確認され,北海道で感染した可能性が考えられた。一方で,本研究の多包虫感染馬の多くは北海道での飼養歴は不明であり,これらの馬は感染地の特定が困難であった。しかし,日本での多包条虫の地理的分布や馬の生産状況を考慮すると,これらの馬も北海道で感染した可能性を完全には否定できないと思われた。
著者
野村 紘一 西 美智子 島田 保昭
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.p54-57, 1988-01
著者
石黒 直隆
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.225-231, 2012-03-20
被引用文献数
1

私のオオカミに関する遺伝学的な解析のきっかけは,約10年前,高知県仁淀村の旧家片岡家の屋根裏から発見された頭骨のDNA分析を依頼されたことに始まる。それまで遺跡から出土する古代犬の骨から残存遺伝子を分離し系統解析を行っていた実績から,ニホンオオカミのミトコンドリアDNA(mtDNA)分析を頼まれた。頭骨は天保8年(1837年)に捕獲されたもので,至近距離から銃で撃たれた弾痕が頭蓋骨に観察されるが,形とサイズとも一級品の試料であった。本試料の分析を通じてニホンオオカミについていろいろと調べるうち,国内のニホンオオカミ骨標本はきわめて少なく,DNA分析がほとんどなされていないばかりか分類学上の位置づけも不明であることが明らかとなった。この分析依頼をきっかけに,全国に散在するオオカミの骨を訪ね歩いては骨粉を採取し,絶滅したオオカミのmtDNA分析を行ってきた。本誌では,これまでの分析結果を基に絶滅した2種類の日本のオオカミの遺伝学的系統についてまとめてみた。
著者
大和田 孝二 村上 隆之 寺原 重昌 熊元 一徳 岩隈 和久
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.7-10, 1999-01-20
参考文献数
16
被引用文献数
1

1987~1997年に宮崎県内の食肉検査所で採取された豚の奇形心324例を解剖学的に観察した, 大動脈狭窄が224例 (69.1%) で最も多く, 次いで心内膜床欠損37例 (11.4%), 心室中隔欠損32例 (9.9%) であった. 大動脈狭窄と心内膜床欠損が多いことはこれまでの報告とほぼ一致し, 豚の心奇形の特徴と考えられた.
著者
村上 覚史 金澤 美緒 村田 亮 関口 真樹 大場 剛実
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.65-69, 2013-01-20

廃用牛における腸管内細菌の生体内移行(bacterial translocation:BT)を解明するため,廃用牛12 頭の臓器を細菌学的,病理学的及び免疫組織化学的手法を用いて調べた.その結果,腸間膜リンパ節(MLN)の91.7 %,肝臓の100 %及び脾臓の66.7%から腸管内細菌が分離された.グラム陰性菌では,Escherichia coliがMLN の16.7%及び肝臓の8.3%から,Klebsiella pneumoniae とPseudomonas aeruginosa が肝臓の8.3%から分離された.グラム陽性菌では,Bacillus 属,Enterococcus 属あるいはStreptococcus 属及びStaphylococcus 属が分離された.S. aureusの分離率はMLN で8.3%,肝臓で25 %,脾臓で8.3%であった.抗E. coliポリクローナル及び抗S. aureus抗体陽性抗原は両菌種が分離された臓器から免疫組織化学的手法で検出された.病理組織学的所見では,多くの検査牛の脾臓濾胞周縁帯に好中球集積層が出現し,MLN 及び脾臓の濾胞にセロイド顆粒の蓄積が目立った.これらの成績から検査した肝臓に異常がみられた廃用牛でBT 及び消耗状態が確認された.
著者
山根 逸郎 鎌田 晶子 杉浦 勝明 濱岡 隆文 村上 洋介 白井 淳資 難波 功一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.583-588, 1997-10-20
参考文献数
11
被引用文献数
1

1997年3月台湾で発生した口蹄疫に関連して, わが国における防疫上の留意点を検討するため, 台湾での口蹄疫の拡散状況を地理情報システムを利用して分析した.有病率, 農家有病率の増加は直線的で, 5月8日にはそれぞれ60%および20%を越え, 台湾本島の全県に侵入し, 発生全期の致死率は約20%であった. 今回の発生は, 北部と南部の2ヵ所でほぼ同時に報告され, その後中部, 東部へと拡大したが, 豚の密度が伝播に重要な役割を果たしており, 密度の高い地域において有病率および新規発症率が高かった. 初期に殺処分率が高かった県ではその後の新規発症率および有病率が低く, 早期の殺処分, 速やかな情報伝達と感染動物の移動制限などが蔓延防止に重要な役割を果たすと考えられる.
著者
相馬 武久 河口 雅登 高木 洋史 齊藤 奈美子
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.538-541, 2016 (Released:2017-01-27)

ワクチン接種後の経過年数と犬ジステンパーウイルス(CDV),犬パルボウイルス2型(CPV-2),犬アデノウイルス1型(CAdV-1)及び犬アデノウイルス2型(CAdV-2)の免疫状態を24カ月齢以上の犬178頭の血清を用いて抗体検査により検討した。その結果,ワクチン効果の保有率及び抗体価は4ウイルスともに経過年数に伴い減少する傾向が観察された。さらに抗体価の変動係数を検討したところ,ワクチン接種後2年以降,CDV,CAdV-1及びCAdV-2において顕著な上昇が観察された。以上の成績から,特にワクチン接種後長期間経過している例では抗体価が減弱している例が多く,そのために免疫状態の個体差が大きくなるものと思われる。このため,特に免疫介在性疾患等の理由でワクチン接種を避けるべき例に対して定期的な抗体検査により免疫状態をモニタリングする必要性があると思われる。
著者
片山 雅一 深山 美和子 古屋 聡子 桑本 康 帆保 誠二 安斉 了
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.139-143, 2003-03-20
参考文献数
13
被引用文献数
1 6

米国から輸入されたクオーターホース9頭中の3頭が, 輸入検疫期間中に発熱と下顎リンパの腫脹を呈した.輸入馬は所定の検査結果が陰性であったため解放されたが, 着地検査においてこの3頭から<I>Streptococcus equi subsp. equi</I> (腺疫菌) が分離された.その後, この乗馬クラブ内では腺疫がまん延したが, 週1回の鼻腔粘膜スワブ細菌検査と, その結果に基づく防疫指導を行った結果, 最終的に58頭中25頭 (43.1%) から腺疫菌が分離され, 最初の分離から22週後に乗馬クラブ内での流行は終息した.この間に分離された腺疫菌は, 集落型がムコイド型でSeM遺伝子型は1型であり, 従来の国内分離株とは異なっていた.また, 輸入馬9頭中4頭の血清抗体価に輸入後の低下が認められた.以上の成績から, 今回の集団発生事例は輸入馬の中に潜んでいた保菌馬に起因したことが証明された.
著者
真田 直子 真田 靖幸
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.61-65, 2007-01-20
被引用文献数
2

オウム嘴羽病(PBFD)の診断において、セキセイインコでは、従来のPCR法で検出できない変異型ウイルスの感染が高率に存在することが明らかとなり、これらの変異株を広く検出できる新しいOgawaらのPCR法の有用性を確認した。これを受けて、全国58カ所の動物病院への来院鳥および12カ所のペットショップでの飼育鳥1070羽について、OgawaらのPCR法によるPBFDの疫学調査を実施した。その結果、一般家庭での飼育鳥770羽の陽性率は19.2%であったのに対し、ペットショップでの飼育鳥300羽の陽性率は16.7%であり、全体では18.5%であった。PBFDウイルスは全国的に広く浸潤しており、陽性率は鳥種に依存していた。セキセイインコ(40.1%)、大型白色オウム類(24.2%)およびヨウム(21.2%)では、高い陽性率を示した。また、鳥種によって臨床症状の発現様式が異なることも明らかとなった。
著者
佐藤 至 辻本 恒徳 山下 竹治 齋田 栄里奈 渡辺 元 田谷 一善 世良 耕一郎 津田 修治
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.733-737, 2007-10-20
被引用文献数
2

野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが、近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている。このため本研究では、ツキノワグマ、ホンシュウジカ、ニホンカモシカ、トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い、これらの重金属による汚染状況を調査した。カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く、ツキノワグマで74頭中27頭、トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた。鉛はツキノワグマとカワウで高く、5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが、カワウではこれを超えるものはなかった。タリウムはすべての試料で検出されなかった。これらの結果は、ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており、さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している。
著者
小野 守 小関 茂樹 斉藤 康倫 泉 徳和 松井 基純 大澤 健司 三宅 陽一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.780-783, 2008-10-20

人工授精(AI)後の陰唇刺激がホルスタイン種乳用牛の受胎率に及ぼす効果を評価するために、未経産牛295頭を用い、AI直後に手指による陰唇刺激を15秒間行って対照群と比較した。その結果、陰唇刺激群の受胎率は対照群よりも高かった(69.2% vs 64.7%)が、有意差はなかった。また、対照群において7月から8月に受胎率が低下する傾向が認められたが、陰唇刺激群では認められなかった。両群の受胎成績のTemperature-Humidity Index (THI)別の分析では、対照群において、暑熱ストレス条件下とされるTHIが72以上の場合の受胎率は、72以下の場合よりも有意に低かった(P<0.01)が、陰唇刺激群ではそのような差異は認められなかった。
著者
蓮田 安信 石井 正人 桔梗 洋右
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.341-344, 2002-06-20
被引用文献数
4

茨城県西地域の6農場の乳牛200頭について顕微鏡凝集反応法により, レプトスピラの抗体調査を実施した.陽性反応とした陽性限界値は抗体価128倍以上とした.その結果, 4農場由来の30頭が陽性 (陽性率15%) であった.調査に用いた3血清型のうちで, 抗体陽性牛数は<I>L</I>. autumnalisが10頭, <I>L</I>. hebdomadisが22頭であったが<I>L</I>.icterohaemorrhagiaeは検出されなかった.茨城県西地域における乳牛のレプトスピラ抗体の陽性率は信頼度95%で15%と推定され, 区間推定で10~20%となった.すべての抗体陽性牛はレプトスピラ症の臨床症状を示していなかった.これらの結果から本地域において乳牛のレプトスピラ感染が広く浸潤している可能性が示唆された.
著者
豊満 義邦 長谷 学 溝下 和則 北野 良夫 福山 孝人
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.432-435, 1990
被引用文献数
1 1

1987年9月鹿児島県の其養豚農家で, 子豚が生後8日までに6頭急死する事例が発生した.検査した子豚3頭の臨床・病理・細菌学的所見では特記すべきものは得られず, 有意菌も分離されなかった.しかし, ウイルス学的検査では2頭の各実質臓器でESK細胞に細胞変性効果を示すウイルスが分離された.このウイルスは理化学的, 生物学的および血清学的性状からトガウイルス科のアルファウイルスに属するゲタウイルスと同定した.<BR>なお, 急死直前の子豚, 同腹豚, 母豚からの分離ウイルスに対する中和抗体価は全て<2であったことから, この疾病は分娩後, ゲタケウルスに感染したものと推測された.
著者
戸口 昌俊 茅根 士郎
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.247-249, 2005-04-20
参考文献数
8

大井競馬場内厩舎(東京都)および小林分厩舎(千葉県)で飼養されている現役競走馬の寄生虫感染状況を調査するため、1988年6月から9月の期間に149頭の糞便検査を実施した。その結果、寄生虫卵の検出率はきわめて高く、調査した馬の94.0%に蠕虫類の虫卵陽性が認められた。その内訳は円虫類91.9%、葉状条虫31.5%、馬回虫は7.4%であった。しかし、馬蟯虫については73頭について行ったが、その寄生は認められなかった。円虫類のEPG値がきわめて高い値(1001-4000)を示した馬は円虫卵陽性馬の15.3%を占め、年齢別では2歳で28.9%、3歳で13.3%、4歳で9.1%、5歳で5.0%であり、EPG値は若齢馬ほど高い傾向がみられた。
著者
加藤 肇 中尾 茂 中田 悟史 佐藤 礼一郎 大西 守 田島 誉士
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.379-383, 2015

サルモネラ・ティフィムリウム及び同ダブリンの不活化菌体抗原を主成分とし,エンドトキシン中和剤であるポリミキシンB硫酸塩を含む牛サルモネラ症不活化ワクチンを,健常なホルスタイン種育成牛8頭に接種した際の生体の反応を,臨床病理学的に観察した.ワクチン接種後に食欲の低下や一般状態の悪化は認められなかった.注射部位に一過性の腫脹及び硬結が認められた.血液検査所見では,ワクチン接種後24時間以内に,急性炎症の指標となるヘマトクリット値,血清総蛋白質濃度,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性値,クレアチンキナーゼ活性値及びシアル酸濃度の有意な上昇が認められた.一方,ワクチン接種後にエンドトキシンショックや過敏症反応を疑わせる臨床症状は認められなかった.免疫学的な有効性が認められて市販されている本ワクチンは,接種部位の局所的な急性炎症を起こすが,重篤な副反応を引き起こす可能性は低いと考えられた.
著者
小松 耕史 松本 純 上片野 一博
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.659-664, 2014

鹿児島県のタイストール式1酪農場において,<i>Chorioptes texanus</i>による皮膚病変及び掻痒症状が多発した.そこでエプリノメクチン製剤(0.5mg/kg)を62頭に投与し,牛群全体の掻痒症状,病変,カウコンフォート及び乳量への影響を評価した.さらに,病変及び乳量について掻痒の有無により群分けし比較した.群全体において,掻痒の指標である尾振り率及び病変部スコアは投与後有意に低下した.カウコンフォートの指標であるStanding idle(起立)の割合は投与後有意に低下し,305日補正乳量は増加した.また,掻痒を示す群では病変部スコアが高く投与後の乳量変化に乏しかったが,掻痒を示さない群では乳量増加が大きかった.群全体において本剤の治療効果が認められたが,罹患牛においてカウコンフォート及び生産性を適正に維持するためには,早期治療により病変を進行させないことが重要と考えられた.