著者
澤田 正一 小林 泰輔
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-46, 2020 (Released:2020-11-13)
参考文献数
16

小児結膜炎-中耳炎症候群33例と中耳炎を伴わない小児急性結膜炎120例の細菌学的検討を行った。小児結膜炎-中耳炎症候群において,眼脂培養では82%から細菌が検出された。細菌は29株検出され,インフルエンザ菌(HI)25株(89%),肺炎球菌(SP)3株(10%),モラクセラ・カタラーリス(MC)1株(3%)であった。眼脂から培養された29株のうち28株(97%)は同種の細菌が鼻咽腔からも検出された。小児結膜炎-中耳炎症候群では,HIが最も重要な原因菌である。急性結膜炎では,65%から細菌が検出され,HI 64株(69%),SP 16株(17%),MC 5株(5%),その他8株(9%)であった。SPまたはHIが検出されたものについて年代別に検討したところ,月齢が上がってくるとHIの比率が上昇していた。小児結膜炎-中耳炎症候群においてはHIが多いが,低月齢ではSPも想定が必要である。
著者
澤田 正一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.316-320, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
8

当院におけるreal-time PCRを用いた取り組みを紹介し,小児急性中耳炎の起因微生物の複雑さを明らかにした。肺炎球菌ワクチン導入後,小児急性中耳炎では肺炎球菌が減少し,インフルエンザ菌が増加している。肺炎球菌の感受性ではワクチンタイプが減少したことにより,耐性肺炎球菌が減少し,インフルエンザ菌では耐性化は進む傾向にあった。耐性インフルエンザ菌の増加している状況は,ペニシリン系抗菌薬がどこまで有効か難しいところではあるが,他の抗菌薬に比べ中耳移行の良いペニシリン系抗菌薬は,今後も上手に使っていく必要がある。そのためには,原因菌やその薬剤感受性をしっかり調べることが重要である。さらに小児急性中耳炎で問題となる反復性中耳炎に対する,十全大補湯と鼓膜換気チューブ留置術について検討した。両者とも有効性の高い治療であるが,十分適応を考えて保護者の十分な同意を得て行う必要がある。