著者
濱田 幸子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.103-118, 2011-03-01

16世紀後半、キリスト教布教・伝道を目的に来日した宣教師によって伝えられ、日本語に翻訳され国字文語体で書かれた『伊曾保物語』は、江戸時代初期、一般に広く普及した。『伊曾保物語』が刊行当初から出版され読み続けられたのは、それが寓話であり、その寓意がその時代にふさわしい教訓として受け入れられたからと考えられる。『伊曾保物語』の翻訳原典は先行研究によって15世紀後半に出たシュタインヘーヴェル本『イソップ』であるとされているが、『伊曾保物語』には序文も後書きもないため、成立の事情がわからない。そこで、同時期にキリシタンによってローマ字口語体で出版された『イソポのハブラス』と比較しながら『伊曾保物語』を読むことで、この書がどういうねらいで翻訳編集され、どのような経緯を経て、一般の日本人を対象とした教訓書として出版されるに至ったのか、その一端を明らかにしようとする。