著者
濱田 時実
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.55-71, 2015-03-01

大阪府富田林市にある美具久留御魂神社の秋季例大祭はだんじりが出る特徴がある。同地域は、「都市」や「農村」ではなく「郊外」と呼べる地域である。南河内においてだんじりが出る祭りは太子町にある科長神社の夏祭りで始まり、美具久留御魂神社の秋季例大祭で終わると言われている。したがって、だんじりが地域の祭礼における象徴ともなっている。本稿ではだんじりに関係する行事を主として取り扱う。これまでの地域研究において、民俗学が扱ってきたフィールドは大きく分けると「都市」「農村」「山村」「海村」に分類することが可能だが、現代におけるフィールドの概況は必ずしもそれらだけでは十分と言えない。祭礼研究においてもフィールドがそれらの分類に属していることを前提として論が進められているのが現状であり、祭礼研究の大きな課題である。本稿では、「都市」「農村」などに属さず、これまで民俗学が取り扱うことのなかった「郊外」という立場に注目し神社祭祀の現状を取り上げる。そして都市祭礼とも村落祭祀とも呼べない、郊外における神社祭祀の事例から、祭礼研究における課題を主張したい。