著者
瀧澤 嘉男
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.77-82, 1997-10-01

リゾート開発問題は大きな社会問題となっているにも関わらず,その問題の複雑さ故に原因の解明及び解決策の提示には到っていない。本論文は,自然保護団体や計画地に隣接する村が反対運動を行い開発問題として注目された長野市飯綱高原の京急ゴルフ場計画を研究の対象地とし,問題に対して住民を中心とする合意が形成できなかった原因を,地元地区である北郷区の意思決定過程を明らかにすることにより考察した。考察の結果,地元地区が開発による活性化を望む場合,外部からもたらされた計画に賛成するしかないという意思決定過程をたどるのは,代替案の比較検討がないというところから生まれる構造的なものであるということ,また,問題が住民同士の相互理解を深ある事により解決を求めるものとならなかったのは,歴史的にも,制度的にも民主主義が未成熟であるということが原因であることを指摘した。