著者
瀬尾 尚宏 八木 宏明 八木 宏明
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

制御性T(regulatory T ; Treg)細胞は自己免疫、がん免疫、感染免疫、移植免疫、さらにはアレルギー免疫など、あらゆる免疫応答の調節に関与する。皮膚免疫領域においても、アトピー性皮膚炎や自己免疫性脱毛症や接触皮膚炎など、皮膚炎症を伴う薬疹の発症など皮膚免疫アンバランスに大きく関与することが解明されつつあり、皮膚疾患を含めた免疫性疾患の治療では、Treg細胞をどのように制御するかが今後の重大な鍵になると考えられている。Treg細胞はCD4^+CD25^(++)forkhead box(fox)p3^(++)のTリンパ球群であるが、現在知られている最も特異性の高いfoxp3は細胞内分子であるため、siRNAなどを用いてその分子の機能を制御することは可能だと考えられるが、現時点で広く受け入れられた方法とは考えにくく、それを標的としたTreg細胞活性の制御に関する臨床応用は難しい。Treg細胞表面分子としては、CD25の他にCTLA-4やGITRなどの発現の優位性が知られているが、そのほとんどが通常のT細胞の活性化マーカーでもあるため、Treg細胞を他のリンパ球集団から見分けることが可能な特異的マーカーとはなりえない。近年、EDG1やCXCR4といったGタンパク質共役型受容体(Gprotein-coupled receptor ; GPCR)がTreg細胞制御に関係すると予測できる報告がなされた。我々もこれまでの研究でTreg細胞には種々のGPCRが優位に発現している可能性を示唆できる結果を得ている。このように、Treg細胞制御には細胞表面上のGPCR発現パターンと細胞内シグナル、さらにはGPCR刺激による細胞動態を詳細に理解することが重要だと思われる。本研究では、各種GPCRのTreg細胞発現を検討し、Treg細胞優位と考えられる15分子を同定することができた。その15種GPCR分子中4分子は、特異的なポリクローン抗体を用いたTreg細胞染色で比較的強い発現を示す。さらに、それら抗体を用いたTreg細胞除去により、効果的に免疫抑制活性を取り除くことができる初期的実験にも成功した。このように、本研究においては、GPCR分子がTreg細胞の動態と制御において極めて重要だという世界で初めての見解を示すことができた。